東洋の模倣銭

  大国唐、宋、明の発行した貨幣は、周辺の国が模倣することがありました。
  本銭との違いは、ほとんど場合、材質と微妙な製作方法だけです。

遼 治平通宝
宋の治平通宝を模倣したものです。
やや緑がかった銅色。書体にも特徴があり、宝の後足が長いものが多いようです。また、背のつくりも宋銭とは異なり、背郭が細くかつ反っています。
23.5mm 2.2g
安南(1) 治平通宝
宋の治平通宝を模倣したものです。
砂蝋質とよばれ、錫と鉛が主成分の貨幣です。表面が腐食して白い粉を吹いています。縦長と横長の文字が特徴的です。祥宋手と分類されています。
24.2mm 2.7g
安南(2) 元豊通宝
宋の元豊通宝を模倣したものです。
白鉛色。異書景祐手と分類されています。
23.3mm 2.8g
安南(3) 嘉隆通宝
明の嘉隆通宝を模倣したものです。
安南銭の最後は真鍮質のものです。
23.5mm 2.1g
清 紹聖元宝
宋の紹聖元宝を模倣したものです。
清の時代の彷鋳銭です。真鍮質で、小振りなのが特徴です。
21.6mm 1.8g
日本(1) 紹聖元宝
宋の紹聖元宝を模倣したものです。
黄白色で、ごく微量の磁性があります。「九州鐚」とか「加治木鐚」と呼ばれていますが、製作は立派です。
九州鐚はほとんどが宋銭の模倣銭です。
戦国末期から江戸初期にかけてのことと思います。
23.4mm 2.9g
日本(2) 開元通宝
唐の開元通宝を模倣したものです。
赤銅色で、「東北鐚」と通称されています。
鋳写しを重ねてかなり小さくなっていますが、小さいわりに字画と輪・郭がはっきりしています。
東北鐚には、唐、宋、南宋をはじめ、朝鮮、安南、日本の皇朝銭などの模倣銭があります。
これも、戦国末期から江戸初期にかけてのことと思います。
22.0mm 2.0g
ソグド 開元通宝
唐の開元通宝を模倣したものです。
ソグディアナ地方で発掘されたものです。ソグド地方でも、7世紀、独自の貨幣を発行しようとしたことがあります。
ずっと後世、新疆地方で「紅銭」とよばれる赤銅質の貨幣が発行されましたが、材質はそれによく似ています。
22.5mm 2.3g
高麗 開元通宝
唐の開元通宝を模倣したものです。
アンチモニー質の白色。また、背夷慢(背輪と背郭が浅い)になっています。
高麗王朝が建国後しばらくした998年ころ発行したものですが、本格的には至りませんでした。
25.4mm 3.3g
大理 弘治通宝
明の弘治通宝を模倣したものです。
分厚く、狭穿(穴が小さい)です。
23.4mm 5.0g 厚さ2.5mm


参考文献:
  安達岸生、「穴の細道」、ボナンザ、1971

2003.10.19  2004.1.17update