変造コイン3題
変造コイン、偽金です。
変造した理由にもいろいろあるようです。
1.面白半分で作ってみました
2.もちろん、お金として使うための贋金です
3.コレクタに高い金で売りつけるためです
そんな変造コインを紹介します。
(1) とう国通宝
東国通宝 3.0g 23.5mm
「東国通宝」といえば、高麗王朝が発行した貨幣です。 上の東国通宝を見て、ン?と思われた方もいらっしゃるでしょう。
まず、銅質が変です。 高麗発行の貨幣は、硬い感じのする独特のアンチモン質です。 ところがこのコインは、柔らかい感じの赤銅質。
次にこの書体です。 字画があまいのは鋳写し鐚銭様ですが、この書体を見て、正解を言い当てられた方はたいしたものです。
高麗・東国通宝
4.2g 24.3mm
南唐・唐国通宝
3.6g 24.9mm
なんと、五代十国のひとつ南唐の「唐国通宝」の「唐」を「東」に変えて作ったものです。 私も人から教えていただいて、やっと気が付きました。 発音が同じものを流用した遊び心での作品、「贋作」というより「戯作品」というものでしょう。
作られた時代は、明治以降でしょうか。 ”やっと気が付いたか”、と地の底で作者がほくそえんでいるような気がします。
なお、古銭界では間違いを防ぐため、東国を”ひがしくに”、唐国を”からくに”と呼び分けます。
(2) 変造明治通宝十銭札
本物の明治通宝十銭 88×53mm
変造の明治通宝十銭 サイズは本物と同じ
明治通宝10銭札の変造札です。 表に「變(変)」のスタンプが押されています。
明治通宝の贋札事件としては、明治12年に政財界を揺るがした「藤田組贋札事件」がありましたが、そのときに作られたのは2円札でした。
裏面の大蔵卿の印(左本物、右変造札)
もともとこの明治通宝札は、ドイツで印刷し、日本で「明治通宝」の文字や刻印、記号、番号、大蔵省印を押印したものです。
この変造札は、ドイツで印刷したものをなんらかの不正な方法で入手し、自分たちで文字や刻印を押印したものらしいです。したがって、変造の決め手は押印されたものの中にあります。
しかし、どこが本物と違うのでしょうか?
まず、裏面の大蔵卿の印の様子が異なります。 本物は太い線と細い線が使い分けられていますが、変造札は殆ど同じ太さです。
「明治通宝」の「通」字(左本物、右変造札)
次に「明治通宝」の「通」字が異なります。本物に比べ、変造札では、用画がふくらんでいます。
その他にも違いはあるのでしょうが、あまり明確ではありません。
参考文献:
三好徹、「ゲルマン札贋造」、NHK歴史への招待、1980
「日本紙幣収集事典」、原点社、2005
(3) 最近作の空首布
左:表と裏、右:首の部分 33.3g 長さ95mm
「空首布」は、いまから2500年ほど前に中国の春秋時代に発行された貨幣です。 青銅の板状の上部に空洞の首がついている変な形です。 空洞の部分には当時の土が詰まっています。 こんな形の貨幣、デザインには首を傾げたくなり、製造技術には拍手をしたくなります。
ここで紹介するのは、2500年前でなく、最近作られたと言われているものです。 ほんものそっくりの錆や土がついています。 錆は強く、土は固く詰まっています。
首に詰まっている土をほじくりだしてみました。 ドライバ、錐などの工具を使っています。 なかなか固く、均質で細かく赤い土の粒子がずっと詰まっています。 カッターナイフは役にたちません。 水につけてみましたが、全く効果ありません。 1時間くらい頑張ってもまだ底の方には赤い土がこびりついています。 首の内部は、表側同様強い錆で被われています。
2002.8.10 2008.5.13 明治通宝の部分を改訂