ニックネームのついたコイン
「ニックネーム」のついたコインはたくさんあります。
日本語では「源氏名」といいます。
そのうちのいくつかを紹介します。
(1) 日 本 ~ 石蹴り元豊
石蹴りは子供の頃、良く遊んだ遊びです。 庭に円を幾つか書いて、円の中の石を蹴り、次の円へ進みます。 円の外に出ると失敗です。
江戸時代初期、長崎において、東南アジアへの輸出用に大量の元豊通宝が鋳造されました。 そのような中に、元の字の先端が切れているのがあります。 これを石蹴りをしている足と石になぞらえて、「石蹴り元豊」というニックネームがつけられています。
文献①は昭和40年代前半に書かれた名著ですが、その中でこの「石蹴り元豊」は現存は5枚くらいであろう、と書かれています。(その後、輸出先の東南アジアで大量に発見され、現在では数千枚はありそうです。)
2.5g 24.2mm
(2) 東 洋 ~ 村雨半両
「村雨(むらさめ)」、激しくなったり弱くなったりして降る雨のことで、にわか雨の一種です。 群雨、叢雨とも書きます。 季節には関係ないため、季語にはなっていません。
半両銭は、秦の時代に始まったものですが、ここにあるのは前漢のもので、背に斜めにたくさんの線がついています。 これを村雨にたとえたものです。 面に斜線がついているものもあります。 もっとも「村雨」とは日本語であり、中国での呼び方ではありません。
半両銭にはこれとは別に「お多福半両」とか「提灯半両」などのニックネームがついたものがあります。
2.9g 24.4mm
(3) 西 洋 ~ 車輪銭
イギリスのジョージ3世(在位1760~1820)の1ペニー銅貨です。
低額のコインは生産しにくかったのですが、産業革命の後蒸気プレス機が開発され、このような大型の銅貨が生産できるようになりました。 厚さ3.4ミリの分厚い銅貨です。
この大きさと外観から、「車輪銭」と呼ばれています。
28.5g 25.9mm 厚さ3.4mm
参考文献
①安達岸生、「穴の細道」、ボナンザ、1971
②ジョナサン・ウィリアムズ、「お金の歴史全書」、東洋書林、1998
2003.11.9