庶民の家計簿

庶民の家計簿を調べてみました。

  ●古代アテネ 前5世紀
このころの労賃は、
    軽い労働 1日半ドラクマ
4ドラクマ銀貨
23.5mm 16.4g
    普通の労働 1日1ドラクマ
    重要な仕事 1日2ドラクマ
くらいでした。 1ドラクマあれば4人家族が1日何とか生活できたようです。
下層市民の4人家族の1年間の支出内訳は次のとおりです。
    ○主食(大麦) 100ドラクマ
    ○副食(オリーブ油、乾イチジク、蜂蜜、ブドウ酒など) 50ドラクマ
    ○その他衣服・住居費など 100~150ドラクマ
    ○合  計  250~300ドラクマ

【出典】 前沢伸行、「世界史リブレット2.ポリス社会に生きる」、山川出版社、1998

  ●中国戦国時代 前5~4世紀
魏の文侯(在位BC445-396)のころの100畝(1.8ha)の田を持つ農民の場合です。
家族は夫婦と子供3人、収穫は、年間で粟(もみ)150石(1石=約20リットル)です。
 
方足布
45×27mm 5.6g
    ○税金に15石、
    ○家族が食べる分に90石、
残りを1石=銅30銭で売却すると、銅1350銭。
    ○春秋の祠(まつり)  300銭、
    ○家族5人の衣料費  1500銭
    ○毎年の不足分    450銭
支出総額は、税・主食・不足分も含めると4950銭です。
右の方足布1枚が1銭だったと想定されます。

【出典】 斑固、『漢書』

  ●宋 11~13世紀
宋の下級兵士の給料は年50~70貫文でした。 これは1日あたりにすると150文になります。
都市での1人の生活費は、およそ
皇宋通宝
    ○主食 米1升 10文 (1升=日本の5合)
    ○副食(柴、油、塩、醤、酢、茶) 10文
    ○その他住居衣服費など 20文
で、計40文くらい必要でした。 5人家族だと、1日で200文必要になります。
兵士の賃金だけで家族を養うのは厳しいです。 副収入や家族の内職があったことでしょう。

【出典】 伊原弘他、世界の歴史7「宋と中央ユーラシア」、中央公論社、1997


  ●1810年ころ ロンドンの植字工
1810年ころのロンドンの植字工の家計です。 年間にすると、124ポンドになります。 夫婦と子供二人です。 
次は、1週間の支出です。 1£(ポンド)=20s(シリング)、1s=12d(ペニー)、1d=4f(ファージング)という、計算しにくい貨幣制度でした。
6ペンス銀貨 1818年
19.4mm 2.8g
    ○パン・小麦粉 6s9d1f  ○バター 2s8d  ○チーズ 11d  ○ミルク 7d
    ○紅茶 1s9d  ○砂糖 1s6d  ○胡椒・塩・酢 6d
    ○肉 10s6d   ○野菜 1s6d   ○黒ビール 4s4d2f
    ○石炭 1s9d  ○石鹸・澱粉・青色染料 9d    ○ロウソク 1s7d2f
    ○衣服・靴 4s  ○家賃 6s  ○共済組合費 10d  ○教育費・本 1s6d
合計は 2£7s6d1f になります。労働者の中では、上流階層に属するようです。

【出典】 角山栄、川北稔、「イギリス都市生活史・路地裏の大英帝国」、平凡社、1982

  ●江戸時代の大工さん
文政年間(1820ころ)の若い大工さん夫婦です。 子供は一人で、住んでいる長屋は4畳半2間です。
1日の賃金は銀5匁4分で、年間294日働くとして年間で銀1,588匁になります。 これは金26両に相当し、また1日あたりにすると、470文になります。
豆板銀 (1.2匁)
1年間の支出は次のとおりです。
    ○店賃    銀120匁  - たなちん(部屋代)です
    ○米代    銀354匁
    ○塩・味噌・醤油・油・薪炭 銀700匁
    ○道具・家具 銀120匁
    ○衣服    銀120匁
    ○つきあい費 銀100匁
    ○残り    銀74匁です。

上の数字は、栗原柳庵『文政年間漫録』に記載されている有名な例ですが、架空の数字であり、やや中流の大工さんです。 長屋でその日暮らしをしている人たちの年収はこの半分以下だったようです。

【出典】 小野武雄、「江戸物価事典」、展望社、1980

  ●1901年のアメリカ
1901年のアメリカを見てみます。 都市労働者の平均値です。
家族数は4.0人、 年収は651ドル。
アメリカの1ドル銀貨 1900年 26.7g 37.8mm
    ○食費         266ドル
    ○住居費        147ドル
    ○被服費         80ドル
    ○その他消費支出    125ドル
    ○非消費支出、預貯金   33ドル
野口英世が渡米したころです。
さすがのアメリカでも、エンゲル係数は43%にもなります。
ちなみに同時代の日本の公務員の平均所得は、273円(135ドル)で、アメリカの丁度半分。

【出典】石坂昭雄他、「商業史」、有斐閣双書、1980


  ●現代の日本
支出合計 646万円
消費支出食料88.1
家賃17.3
住居、家具21.6
光熱、水道24.9
衣料13.0
医療12.5
交通、教育、娯楽113.1
交際、など100.5
非消費支出所得税、住民税44.8
社会保険など58.2
預貯金預貯金66.1
保険掛金41.5
ローン返済42.9
右の表は、総務省が発表している日本の全国勤労者世帯の平均支出(平成14年)です。
家族数は平均3.46人、世帯主の平均年齢は46.4歳です。
また、世帯の年収は646万円で、その内訳は、
    世帯主所得 526.3万円
    配偶者の所得 66.2万円
    その他の収入 53.5万円
です。
19世紀までと比べ、エンゲル係数は確実に減少しています。

【出典】 総務省統計局、「統計データ」

2004.8.7