10世紀の建国ラッシュ ~ 契丹・高麗・大理・大越

  10世紀、中国では唐が滅んだあと、華北には梁・唐・晋・漢・周の5つの国が交代し、南部には10の国が興亡しました。いわゆる五代十国です。古代から中世への過渡期です。

  このころ中国の周辺にもいくつかの国が興り、それぞれ独自の貨幣を作り始めました。

  それらの中から、4つの国の貨幣を紹介します。



10世紀の東アジア

 9世紀:         10世紀            :11世紀 
    :                         :
 日本───────────────────────────────→
    :後百済─────┐                :
 新羅──────────┤                :
    :  高麗────┴────────────────────→
 渤海──────────東丹─┐             :
    :  契丹(遼)────┴─────────────────→
    :  燕──┐      北漢────────┐  :
    :晋(後唐)┼──後晋──後漢──後周──宋─┼──────→
 唐───後梁───┤                │  :
    :  前蜀─┘  後蜀────────────┤  :
    :  荊南(南平)──────────────┤  :
    :  呉越──────────────────┤  :
    :     楚─────┐          │  :
    :呉───────南唐─┼──────────┤  :
    :  ビン(殷)────┘          │  :
    :  南漢──────────────────┘  :
    :           南晋──大越(丁朝)──黎朝────→
 南詔(大禮)─大長和─大天興─大義寧─大理────────────→
    :                         :
         (地図は、吉川弘文館の「世界史地図」を利用しました)



契丹(遼) 咸雍通宝
契丹は、耶律阿保機が907年に建国しました。後に、遼と国号を変えています。
建国当初から独自の貨幣を発行しましたが、当初のものは稀少です。ここに紹介するのは、建国後160年ほどたったころに発行された貨幣です。
契丹は、独自の契丹文字を発明しましたが、その文字が貨幣に使われることはありませんでした。
24.5mm 3.3g
高麗 東国重宝
王建は918年に高麗を建国し、935年には新羅王朝を滅ぼして朝鮮半島を統一しました。英語のKoreaの元になった国号です。
宮廷・官僚・武官の派閥抗争が絶えない国でした。また青磁を生み出した国です(次の李朝の白磁と対照的です)。
麻の布を貨幣として使用していましたが、1102年になって、東国重宝など6種類の貨幣を鋳造します。アンチモニー質の独特の銅質です。
24.4mm 6.3g
大理 太平通宝
937年、雲南地方に段思平が建国した国です。「大理石」の大理です。
白族を中心にした多民族国家です。この国の華やかな甲冑は宋でも有名だったそうです。
この国の貨幣は、ぶ厚く、狭穿(穴が小さい)のが特色です
ただし、これらの貨幣の鋳造国と時期には確証がありません。
24.5mm 5.3g 厚さ2.0mm
大越 大平興宝 背丁
大越は、968年ベトナム北部に、丁部領が建国した国です。
ほのぼのとした書体に愛着が持てます。背の「丁」の字も可愛らしいです。
ベトナム(安南)では、このころより中国風の貨幣を大量に発行始めます。
23.1mm 2.2g


  日本では、和同開珎に始まった皇朝銭が、958年の乾元大宝で終了し、貨幣経済から元の物品経済に戻りました。 日本で再び貨幣が使われるようになるのは、約200年後の平安末期です。

2001.9.15 2003.10.19改訂