大銭と小銭

  日本の江戸時代後期までの銅銭は、殆どが一文銭(小平銭)でした。 お隣の中国では、唐の時代から二文銭(折二銭)、十文銭などの大銭も多く発行されていました。
  ところが、本来大銭しかないはずの銭銘に、どういうわけか小平銭がみつかることがあります。 民間での私鋳銭(早くいうと、贋金の一種)です。

● 慶暦重宝
 北宋・慶暦重宝折二 (1045年)

 折二(せつじ)銭の嚆矢です。 名目上のものではなく、重さもたっぷり1文銭の2倍あります。
 「重宝」は、通常大銭の銘にのみ使われました。

 30.4mm 7.6g
 小平銭

 慶暦重宝には、小平銭はないはずですが、稀にこんなのもあります。
 民間の私鋳銭でしょうが、決して出来は悪くありません。

 25.1mm 3.6g

● 崇寧重宝
 北宋・崇寧重宝当十 (1104年)

 北宋も晩年になると、名目貨幣に近いものが出現しました。 この貨幣は1文銭の3~4倍の重さしかありませんが、額面は10文です。
 ただし、書体は立派です。 唐様で書く三代目、・・・ そんな雰囲気です。

 34.3mm 11.3g
 小平銭

 これは見るからに民間の私鋳銭です。 文字も定かではありません。

 25.0mm 2.5g

● 長崎永暦通宝
 永暦通宝折二 (1651年)

 明の末期、鄭成功の依頼により長崎において鋳造されたものです。 真書と篆書の2種類ありますが、ともに折二銭です。

 27.8mm 4.8g
 小平銭

 これは、折二銭を削り取って小さくしたもののようです。
 中国では盛んに用いられた折二銭は、日本では全く人気がありませんでした。 そのため、折二銭もこのように小さくして流通させたのでしょう。

 24.5mm 4.7g



2003.9.6