東南アジアの貨幣



  東南アジアには、地形や気候の複雑さから、大きな統一国家が発展しませんでした。
  そのため貨幣も時と場所によって、さまざまな素材を使い、さまざまな形態をしています。

● スマトラ島
シュリービジャヤ帝国の金貨 10~12世紀 2.4g 7mm
  スマトラ島には、7~14世紀に「シュリービジャヤ帝国」が栄えました。 仏教が盛んで、中国には「室利仏逝国」として紹介されました。
  パレンバンを中心に海洋交易で栄え、一時はセイロン島やルソン島(フィリピン)までを支配する大帝国になりました。

● ラオス
ランサン王国の銀貨 14~15世紀 19.9g 42mm
  ラオスには、1353年に最初の統一王朝「ランサン王国」が建国されました。 「ランサン」とは、「百万の象」という意味です。
  首都はランプラバン、後にビエンチャンでした。
  18世紀ころまで栄えましたが、内訌やベトナムやシャムから攻められたりして衰え、1893年にフランス領となりました。

● ジャワ島
マジャパヒト王国の銀貨 15~16世紀 2.2g 13.8mm
  13世紀末に、元の軍がジャワ島にも攻めてきました。 元の軍を巧みに利用した武将ビジャヤが建国したのが「マジャパヒト王国」です。
  ヒンズー教が盛んで、16世紀までつづきました。
  その後ジャワでは「マタラム王国」が建国されましたが、1755年、オランダ領となりました。

● ビルマ(ミャンマー)
トウングー朝の錫鉛貨 16~17世紀 1.7g 22.7mm
  ビルマは、「パガン朝」に統一されていたものの、13世紀の元の5回にわたる侵攻により瓦解し、いくつかの国家に分裂しました。
  16世紀になって、再び「トウングー朝」によって統一されました。 首都はペグーです。
  一時は隣国のシャムのアユタヤ朝を支配するなど大いに栄えましたが、インドに攻められたりして、18世紀に「アラウンバヤー朝」になりました。
● カンボジア
カンボジア王国の銀貨 1835-1904 1.5g 13.5mm
  カンボジアは、古来「真臘」として知られていました。
  アンコールに都があり、12世紀に造営されたアンコールワットは有名です。
  14世紀以降は、タイとベトナムに挟撃されだんだん勢力を失い、1863年にフランス領となりました。

● シャム(タイ)
チャクリ朝の1バーツ銀貨 1851-68 13.5g 12-16mm
  14世紀にアユタヤを都とする「アユタヤ王朝」が成立し、海洋貿易を盛んにし、16世紀には山田長政ら多くの日本人も住んでいました。
  18世紀に、ビルマに攻められて国が滅び、かわってバンコクを首都とする「チャクリ(ラタナコーシン)朝」が成立して、今日に至っています。
  19世紀には、イギリスとフランスの両植民地の圧力を巧みな外交でかわし、東南アジアで唯一独立を保ちました。

● ベトナム
トンキンの1/600ピアストル錫貨 1905 2.5g 25.0mm
  ベトナムは古代より中国の支配を受けていましたが、10世紀に唐が衰退したとき、丁氏が独立して「大越」を建国しました。 その後、李氏・陳氏・黎氏・莫氏、阮氏らの王朝を経て、1884年フランス領となりました。

● ボルネオ島
ボルネオ島の鉄貨 19-20世紀? 
左から、13.6g 12-16mm/37.5g 20-22mm/14.1g 31mm
  ボルネオ島には、13世紀ころからイスラム勢力が勢力をふるいましたが、大きな国家には育ちませんでした。
  後に北部はイギリス領、南部はオランダ領となりました。



2006.1.9