ヨーロッパの帝王



● オーストリー ハプスブルグ家 マリア・テレジア 在位1740~1780
1ターレル銀貨  1780年銘、だだし後年の発行
このコインについて詳しくは ⇒ 「1780年銘のマリア・テレジア銀貨」
40.5mm 28.0g
  ハプスブルグ家は、13世紀にオーストリーを領有した後、ハンガリー、スペイン、オランダなどを併合し、16世紀にはヨーロッパ最大の王家となりました。
  マリア・テレジア自身は「オーストリー大公」であり、ドイツ王・神聖ローマ皇帝となったのは彼女の父カール6世、夫フランツ1世、息子ヨーゼフ2世たちです。
  オーストリー継承戦争でプロシャ王国に敗れたり、七年戦争を起こしながら敗れたり、当初は外交的には苦労したようです。
  その後、長男のヨーゼフ2世とともに産業育成・行政組織の整備・農奴解放などを行い、啓蒙専制君主の典型として知られています。
  マリー・アントワネットを含め、16人の子宝に恵まれました。


ルイ14世 1/12エキュ銀貨  1644年 20.0mm 2.1g
ルイ15世 1/10エキュ銀貨  1763年 21.4mm 2.7g
ルイ16世 1/ 5エキュ銀貨  1788年 25.7mm 5.8g
(左から)
● フランス ブルボン家 
  ルイ14世 在位1643~1715 
  わずか4才でフランス王になりました。 右のコインはその翌年のものです。
  母と宰相マザランから帝王学を学び、絶対王政を確固たるものにし、「太陽王」として知られています。
  ルイ15世 在位1715~1774 
  ルイ14世の曾孫です。 内政・外政ともに芳しくなく、インドや北アメリカの植民地を失いました。
  ルイ16世 在位1774~1792 
  ルイ15世の孫です。 この王も政治能力は芳しくなく、1789年フランス革命が勃発し、1793年、革命政府により処刑されました。 皇后はマリー・アントワネットです。



● ロシア ロマノフ家 エカテリーナ2世 在位1762~1796
100ルーブル紙幣  1910年発行
260×122mmの巨大な大きさです。右端の空白部には女帝像の透かしがあります。
  ドイツの小公国の娘エカテリーナは、15歳のときロシア皇太子と婚約し、ロシアに移ります。
  ここまでなら、当時のヨーロッパではよくあることですが、彼女は、皇帝になった病弱な夫ピョートル3世を武力で追放し、自分自身が皇帝になったのです。
  その後、積極的な対外政策を推進するとともに、農奴制を強化し、ロシアの貴族制を最も華やかにした専制君主です。


● フランス ボナパルト家 ナポレオン 在位1804~1814
40フラン金貨  1811年発行
月桂冠をつけたナポレオン。いわゆる”ナポレオン金貨”。
26.0mm 12.8g 品位900
  コルシカ島に生まれ軍隊にはいり、フランス革命後の混乱期に頭角をあらわし、ついに皇帝になりました。 最盛期にはロシアとイギリス以外のすべてのヨーロッパを支配しましたが、ロシア遠征に失敗した後、ワーテルローで連合軍に敗れ、セントヘレナ島に流されその地で没しました。
  二番目の夫人はマリア・テレジアの曾孫にあたるマリー・ルイーズです。
  ”諸君、4000年が我々を見下ろしている" 、エジプト遠征のとき、スフィンクスの前で兵士たちに演説したせりふが有名です。


● イギリス ハノーバー家 ヴィクトリア 在位1837~1901
1ペニー銅貨  1857年発行
女王の肖像は、"ヤングヘッド”と呼ばれている。裏はブリタニア女神。
34.2mm 18.7g
  在位64年は、イギリス歴代君主中、最長です。
  黄金時代の大英帝国の象徴として、イギリス本国の他、インド、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどを領有し、「インド皇帝」の称号もありました。
  夫君はドイツ生れのウィンザー公アルバートです。 仲の良いご夫婦だったそうです。
  あるとき夫婦喧嘩をしました。 夫君は自分の部屋に閉じこもりました。 後悔した女王は、夫君の部屋のドアをノックしました。 ”誰だ”、夫君の声です
  ”イギリス女王です” ・・・ ドアは開きません
  ”ヴィクトリアです” ・・・ ドアは開きません
  ”あなたの妻です”  ・・・ ドアは開きました


● ロシア ロマノフ家 ニコライ2世 在位1894~1917
1ルーブル銀貨  1896年発行
裏面はビザンツの鷲。
33.6mm 19.9g
  ロシアの皇帝は「ツァーリ」と呼ばれます。 右のコインの銘文は「神の恩寵による全ロシアのツァーリ、ニコライ2世」と記されています。
  イギリスのジョージ5世とは、母どうしが姉妹です。 また、王妃のアレクサンドラは、ヴィクトリア女王の孫です。 
  皇太子時代、1891年に日本を訪れたとき、大津で警備の警官に刺されて負傷しました。 有名な「大津事件」です。
  専制政治を行いましたが、日露戦争に敗れ、また第一次大戦の終盤にロシア革命が勃発し、退位させられ、そして処刑されました。


● ドイツ ホーエンツォルレルン家 
10マルク金貨  1873年発行
ヴィルヘルム1世。
3.982g
  ヴィルヘルム1世 在位1861~1888
  プロシャ王でしたが、ビスマルクを起用し、議会と対抗して軍政改革を強行し、オーストリーを除くドイツを統一しました。
5マルク銀貨  1901年発行
プロシャ王国建国200年記念銀貨。奥は初代のフリードリヒ大選帝侯。
38.0mm 27.7g
  ヴィルヘルム2世 在位1888~1918
  ドイツの皇帝は「カイゼル」と呼ばれます。 右のコインの皇帝の髯、日本でも流行し 「カイゼル髯」と呼ばれました。
  ヴィルヘルム1世の孫で、母はヴィクトリア女王の娘です。
  元勲のビスマルクを罷免し、海軍拡張などの世界政策を推進しました。 しかし、第一次大戦の終盤、ドイツ革命が勃発し、退位しオランダに亡命しました。
  第一次大戦は、ヨーロッパの3王家、ホーヘンツォルレルン家、パプスブルグ家、ロマノフ家を消滅してしまいました。



帝王間の縁戚関係図([墺]オーストリー [仏]フランス [露]ロシア [英]イギリス [独]ドイツ) 赤字は女性

[墺]マリア・テレージア┬[墺]レオポルドⅡ─[墺]フランツⅡ─マリー・ルイーズ
            └───マリー・アントワネット      ┃
                    ┃        [仏]ナポレオン
[仏]ルイⅩⅣ─○─○─ルイⅩⅤ─○─ルイⅩⅥ

[露]エカテリーナ─○─○─○─[露]アレクサンドルⅢ
                    ┠─────[露]ニコライⅡ
      (デンマーク王家)─┬ダグマール         ┃
                └アレグザンドラ       ┃
                    ┠─[英]ジョージⅤ ┃
                ┌[英]エドワードⅤⅡ    ┃
      [英]ヴィクトリア─┼アリス───────アレクサンドラ
                └ヴィクトリア(娘)
                    ┠───[独]ヴィルヘルムⅡ
      [独]ヴィルヘルムⅠ─フリードリヒⅢ

参考文献:
  久光重平、「西洋貨幣史」、国書刊行会、1995
  「角川世界史辞典」、角川書店、2001

2004.3.20  2004.10.11ブルボン家を追加