ターレル ⇒ ドル ⇒ 円



地図はGoogle Map を利用しました

 ボヘミアのヨアヒモスタール(Joachimstahl)、<<チェコ名ではヤーヒモフ(Jáchymov)>>、はヨーロッパ有数の銀山です。 この地で、16世紀初頭から大型の銀貨が発行されました。
 銀貨の重さは1マルクの9分の1(26グラム)と定められ、「帝国ターレル(ReichsThaler)」と名づけられました。 「ターレル(Thaler)」は、地名の下部で、「谷」という意味です。
 この銀貨は、当時のヨーロッパの標準銀貨となり、多くの国が「ターレル銀貨」を発行しました。
 ただしその名前は、国と時代とともに変遷し、現在は「ドル」と呼ばれています。


●神聖ローマ帝国のターレル銀貨
 「帝国ターレル」の銀貨は、神聖ローマ帝国の各地で発行されました。
 この銀貨は、チロルのマクシミリアン大公が発行したものです。
 チロルは、1484年にヨーロッパ最初の大型銀貨(15.5g)を発行したことでも有名です。
 1616年 28.3g 41.1mm
●オランダのライオン・ダーレル銀貨
 「ターレル」は、低地ドイツでは「ダーレル」となまって発音されました。
 ドイツ周辺の国家も、この大きさを見習った銀貨を発行するようになりました。
 オランダで発行されたこの銀貨は、正式には「40ストイフェル(Stuiver)」銀貨なのですが、通常は「ダーレル(Daalder)」と呼ばれていました。
 1589年 26.3g 41.0mm
●メキシコ共和国の8レアル銀貨
 スペインはアメリカ大陸のメキシコやペルーで優良な銀山を発見し、大量の銀貨を発行しました。
 「8レアル(Real)」銀貨なのですが、通常は「スペイン・ドル(Spanish Daler)」とか、「メキシコ・ドル」と呼ばれていました。
 1844年 26.9g 38.0mm
●イギリス領香港の1ドル=1圓銀貨
 イギリスが東洋貿易で使用した貿易銀です。
 「ONE DOLLAR」と「壱圓」の両方が併記されています。裏面の小さなアラビア文字(ساتو رڠڬية‎)は、マレーの貨幣単位(One Ringgit)です。
 1898年 26.8g 38.8mm
●アメリカ合衆国の1ドル銀貨
 アメリカが独立したとき、新たな貨幣単位として、当時のアメリカ大陸で盛んに使われていた「ドル(Dollar)」を採用しました。
 1900年 26.7g 37.8mm
●中華民国の1圓銀貨
 中国は、ヨーロッパ人に絹や茶を売り、銀貨を得ていました。メキシコから来る円形の銀貨は「銀圓」と呼ばれ大歓迎されました。
 中華民国が成立したとき、メキシコ・ドルと同じ大きさの銀貨を発行し、貨幣単位を「圓」としました。
 その後、「圓」は画数が多いため、発音yuanの同じ「元」の字が使われるようになりました。(「円」の字は、日本固有の文字であり、中国には存在しませんでした)
 1914年 26.5g 38.9mm

 ● シェークスピアと ”Dollar"
その結果、
ノルウェー王スイーノーは和睦を求めてきましたが、
わがほうは、聖コルム島にて一万ドルの
賠償金支払いを命じ、それがはたされるまで
敵がたの死者の埋葬をも禁じてあります。
        (小田島雄志訳)
   That now
   Sweeno, the Norway's King, craves composition;
   Nor would we deign him burial of his men
   Till he disbursed at Saint Colme's Inch
   Ten thousand dollars to our general use.
         ... Macbeth Act I, Scene 2
 『マクベス』が初演されたのは1611年です。 これはピルグリム・ファーザーズ(1620年)より前のことです。
 このころから、イギリスでは”Dollar"の言葉が使われていたのです。 (もちろん、マクベスの時代にはありえなかった言葉ですが)

 ● 津軽弁の「だらこ」と、鹿児島弁の「どろ」
 津軽では、小銭、コインのことを、「だらこ」と言うそうです。 鹿児島では、「どろ」と言うそうです。
   なもや、10円だらこ4つでえでばす。(津軽にて)
   5円どろがあっつろかいねー? (鹿児島にて)
 どちらも、明治時代に外国の人たちが「ダラー」、「ドル」と言っていたのが、語源だそうです。
 日本の北の端と南の端で、・・・不思議な現象です。

参考文献 :
    Thaler From Wikipedia, the free encyclopedia
2006.2.11