面文で識別する背文銭

 背文銭は、裏に「文」の字のあるおなじみのものです。 分類は、通常まず背文の形を見ます。 ここでは、あえて面文だけの分類に挑戦しました。
 基本的には、面文と背文がともに異なるもののみを1種としました。 従って、背文だけが異なるもの(「入文」など)や、面文の一部だけが異なるもの(「断柱永」、「欠サ寛」など)は省きました。
 参考文献は次のとおりです。
  【泉】増尾富房、「新寛永泉志」、穴銭堂、1986  評価は10段階評価
  【カ】「新寛永通宝カタログ」、新寛永クラブ、1987  評価は美品基準の市場価格
  【い】静岡いづみ会、「穴銭入門・新寛永の部」、書信館出版、1992  評価は20段階
  【図】「新寛永通宝図会」、ハドソン・東洋鋳造貨幣研究所、1998  評価は市場価格

   
 ● 正字、中字、深字
No.1

正  字

 


全体に均整の取れた文字で、くせがない。

寛:やや俯す。
永:二画目の角が少し突き出す。
【泉】正字背文 十
【カ】正字背文 150円
【い】正字背文 20
【図】正字背文 100円
No.2

正字 ②

 

寛:冠の点が小さい
【泉】
【カ】正字背狭文 2000円
【い】
【図】正字背文(仰文) 500円
No.3

正字 ③

 

永:フの末端が欠落している
【泉】正字入文刔尾永 九
【カ】正字背文入文短フ永 500円
【い】正字入文 19
【図】正字背文(入文) 300円
No.4

正字 ④

 
全体に字画の太細が目立つ。

通:宝上に点があるのがある。
【泉】正字勁文 九
【カ】正字背勁文 300円
【い】正字勁文 18
【図】正字背文(勁文) 300円
No.5

中  字

 

寛:後足が内跳ね。
宝:尓の後点が少し縦向きになる。
【泉】中字背文 十
【カ】中字背文 300円
【い】中字背文 20
【図】中字背文 100円
No.6

深  字

 
少し深彫りになる。

寛:冠の前垂れが長く、外に開く。
永:点が仰ぎ、大きい。
宝:尓の後点が大きい。
【泉】深字背文 五
【カ】深字背文 4000円
【い】深字背文 10
【図】深字背文 5000円
No.7

深字欠画通

 

深字に似ているが、面も背も異なる。

永:狭永気味。
通:用の跳ねが欠ける。
【泉】深字太一文 七
【カ】深字背太一文 2000円
【い】深字欠画通 13
【図】深字太一文 3000円
No.8

深字小文

 

これも深字に似ているが、面も背も異なる。

寛:冠の点が横引きから離れる。
永:点がやや縦向き。柱とフ頭が仰ぎ、広永気味。
【泉】深字小文 八
【カ】深字背小文 2000円
【い】深字小文 16
【図】深字小文 1500円
 ● 退 点 文
No.9

退点文

 
全体に肥字で独特の書体である。

寛:見の前足が短い。寛字の重心が右に寄る。
【泉】退点文 九
【カ】退点文 1000円
【い】退点文 19
【図】退点文 500円
 ● 細 字
No.10

細  字

 


全体に細字である。

宝:尓の柱が横引きから離れる。
【泉】細字背文 十
【カ】細字背文 150円
【い】細字背文 20
【図】細字背文 100円
No.11

細字 ②

 

永:末尾が削られ短くなっている。
【泉】細字奇文 八
【カ】細字背文奇文 2000円
【い】細字奇文 15
【図】細字背文(奇文)2000円
No.12

細字小文

 

細字より細く、繊字とよぶこともある。わずかに額輪。

永:柱にうねりがある。
通:辵頭に爪があり、辵頭が反る。
宝:尓の後点が少し横向き。
【泉】細字小文 十
【カ】細字背小文 150円
【い】細字小文 20
【図】繊字小文 100円
No.13

細字狭文

 
細字より細く、繊字とよぶこともある。わずかに額輪。

寛:寛尾が内跳ね。
永:柱が反っている。
宝:尓の後点がやや縦向き。貝の後足上端が、前腰に対してやや退く。
【泉】細字狭文 十
【カ】細字背狭文 150円
【い】細字狭文 20
【図】繊字狭文 100円
No.14

細字流文

 
細字小文によく似るが、額輪ではなく、少し太字。

寛:尾が直跳ねに近い。
【泉】細字流文 四
【カ】細字背流文 6000円
【い】
【図】細字小文 10,000円
 ● 縮 字
No.15

縮  字

 
面文やや小さく、縮んでいるようにみえる。

寛:見の後柱が下梁よりも下に出ない。俯さない。
永:中心が俯す。ノが短い。
通:辵の高さが低い。
宝:縮字系の他に比べ、尓の前点がやや縦向きで細く、横引きに接している。
【泉】縮字背文 九
【カ】縮字背文 300円
【い】縮字背文濶縁 19
【図】縮字背文 300円
No.16

縮字 ②

 

寛:前足の先が削られ短い。
通:辵の末尾が切れて無い。
【泉】
【カ】
【い】
【図】縮字背文(短足寛)2500円
No.17

縮字 ③

 

やや刔輪

永:跳ねが短く、やや縦向き。

【泉】縮字背文刔輪 十
【カ】縮字背文刔輪 300円
【い】縮字背文刔輪 20
【図】縮字広文 200円
No.18

縮字 ④

 

再刔輪

寛:冠点が小さい。
宝:尓の跳ねがない。
【泉】縮字背文再刔輪 十
【カ】
【い】
【図】縮字狭文 200円
No.19

縮字 ⑤

 

刔輪

寛:方冠寛
【泉】縮字痩文 九
【カ】
【い】
【図】縮字進文 400円
No.20

縮字 ⑥

 

刔輪

通:二引き上画右側に鋳切れがある。
【泉】縮字勁文 七
【カ】縮字背勁文 2000円
【い】縮字勁文 19
【図】縮字勁文 1000円
 ● 島屋文
No.21

島屋文

 
深彫り。(なお、この品島屋文ではなく、島屋無背です)

寛:仰ぐ。冠と尾の間の隙間が狭い。
通:ユ頭通。やや仰ぐ。
宝:俯す。
【泉】島屋文 二
【カ】島屋文 20万円
【い】島屋文 少
【図】島屋文 25万円


  練習問題
  右の3つは、「秋田阿仁銅山(加護山)」の寛文銭写しで、いずれも無背です。
  上のどれになるでしょうか。 答えはありません。

2004.5.2