金のバブル

 
天皇陛下御即位記念10万円金貨
平成3年4月10日発行
33mm 30g 金品位1000

 この記事は、最初2011年8月にに書いたものですが、その後の金価格の大きな変動により、原稿を大きく改訂いたしました。 (2023年8月)

 上の10万円金貨は純金30g。 この金貨が発行された当時は金1gはおよそ1800円。 したがって金貨1枚分の金は5.4万円しかありませんでした。
 コインとしての人気もなく、コインの相場も10万円を超えることはありませんでした。 いざとなれば、銀行で額面の10万円に交換してもらえる、そんな金貨でした。
 

 ところが昨今、金の異常な高騰です。 2005年から単調に高騰し、5年ほどで高止まりしていたのですが、2020年ころから再び急騰しています。 ”Gold Bubble” と名付けて警告している人たちもいます。


 金の高騰の原因はいくつかあるようです。
 ①イスラムのテロやウクライナ侵攻などの社会不安定時には、「有事の金」としての金が安定資産として求められます。 台湾有事も懸念材料です。
 ②金利低下、ドルの信用低下などの経済不安定時では、「インフレヘッジ」としての金の相対的な価格が上昇します。 アメリカの国債でさえ格付けが下がりました。
 ③富裕層にとって、金は絶好の投資対象です。 コロナ渦で使いきれなかった遊興資金が、投資に振り向けられています。
 ④スマホ、パソコンなどの工業用利用が増大しています。 金の産出量にも限界があります。 今後数十年で産出は枯渇するともいわれています。
 ⑤金の国際価格は、ロンドン市場で決まります。 円安は日本での価格を高騰させます。

 1980年に高騰したのも、ソ連のアフガニスタン侵攻が原因の一つでした。 その後、ソ連が金を大量に放出したことから、急落しました。

 戦後、平成21年までに発行された金貨は次のとおりです。 金品位はすべて1000(純金)です。 全ての金貨で、金の地金価値が販売価格を越えています。
記念金貨名額面発行年重さ発行枚数造幣局
販売価格
備考
天皇陛下御在位60年10万円昭和61189620g1000万枚額面他に少数のセットあり
昭和62198720g100万枚額面他に少数のセットあり
昭和62198720g12.4万枚126,500円★
天皇陛下御即位10万円平成2199030g210万枚額面発行枚数は2点セットを含む
平成3199130g20万枚113,300円★
皇太子御成婚5万円平成5199318g200万枚額面
平成5199318g10万枚3点セット
70,000円★
3点プルーフセットのみ
長野オリンピック1万円1次 平成9199715.6g5.5万枚38,000円★発行枚数は3点プルーフセットも含む
2次 平成91997 ↑5.5万枚38,000円★ ↑
3次 平成101998 ↑5.5万枚38,737円★ ↑
天皇陛下御在位10年1万円平成11199920g20万枚41,000円★発行枚数は2点プルーフセットを含む
2002FIFAワールドカップ1万円平成14200215.6g10万枚40,000円★発行枚数は2点プルーフセットを含む
2005年日本国際博覧会1万円平成16200415.6g7万枚40,000円★発行枚数は2点プルーフセットを含む
天皇陛下御在位20年1万円平成21200920g10万枚80,000円★発行枚数は2点プルーフセットを含む
   ★はプルーフ貨

 日本の法律では、現在有効な貨幣を傷つけたり溶解することはできません。 そのため、この金貨がそのまま金地金の値段で取引されることははばかられます。 しかし、コインとしての相場は、当然高騰しています。

  【参考】 「田中貴金属工業」のホームページ

  2011.8.19   2023.8.4改訂