二度打ちコイン

テトラドラクマ銀貨
ローマ共和国アケーア属州
紀元前1世紀
寛永通宝(縮字背文)
江戸幕府発行
17世紀

古代から中世にかけてのヨーロッパのコインは、金や銀の素材を円形にくりぬき、表と裏にダイスdie/diesと呼ばれる金型を打ち付けて模様を作り出します。
ときには手が震えて、コインがずれてしまい、二度打ちの様相をさらすことがあります。
上のコインは、紀元前1世紀に、ローマの属州となっていたギリシャのアテネで発行されたテトラドラクマ銀貨です。
表面はヘルメットをつけたアテナ女神なのですが、女神の口元が少し変です。 口と鼻が二重になっています。
ダイスを打ち付けるとき、少しずれて顔の一部が刻印され、すぐに気付いて打ちなおしたのでしょう。 しかし、口と鼻の一部が残され、美しい女神の顔が台無しになっています。


江戸時代までの東洋のコインは、母銭と呼ばれるきれいに仕上げた銭を砂のうえに押し付け、表側と裏側の砂型を作り、その間に溶かした銅を流し込みます。 この母銭を砂に押し付ける時、手が震えてずれてしまうことがあります。
上の寛永通宝は、すべての文字が二重になっています。 ずれ巾は1ミリ弱です。

  2013.3.16