朝鮮の二銭五分白銅貨

2銭5分白銅貨
官鋳品


光武2年(1898)
20.7mm 厚さ1.8mm 4.7g
非官鋳品

20.4mm 厚さ1.6mm 4.2g

朝鮮(李氏朝鮮)は、1892年に貨幣制度を改め、
    1圜 = 5両 = 50銭 = 500分
としました。 1圜は、当時の世界の標準銀貨、1ドル、1円、1元などと同じ価値をもつものです。
そして、1圜銀貨、1両銀貨、2銭5分白銅貨、5分銅貨、1分黄銅貨の5種類の硬貨を発行しましたが、日常生活で最も使われたのは2銭5分白銅貨です。
この白銅貨は、およそ4億枚発行されました。 当時の朝鮮半島の人口は1千万前後でしたから、人口1人あたり40枚くらいとなります。
また、この当時の朝鮮での労働者の1日の賃金は、この白銅貨1~2枚程度でしたので、この白銅貨の価値が推測できます。

上の2枚のコインは、この2銭5分白銅貨ですが、2枚には大きな差があります。 重さも違いますし、素人目にもデザインの違いがはっきり分かります。 下のコインの摩耗が激しいのは、亜鉛分が多いせいだと思います。
実は、上のコインは政府が製造したもので、下のコインは民間で製造されたもののようです。
なにしろ、このコインは、その製造者により次のように分類されるそうです。
  ・官鋳品 政府(典圜局)が製造したもの
  ・特鋳品 政府が民間の企業などに依頼して製造したもの
  ・黙鋳品 宮中が、献金の見返りに民間に製造を許可したもの
  ・私鋳品 民間が、非合法的に製造したもの
  ・密輸入品 日本の大阪などで製造されて、密輸入されたもの
この白銅貨は2割のコストで製造できます。 非合法な製造が横行しました。 この白銅貨の総発行枚数約4億枚のうち、官鋳品は全体の6割くらいしかなかったと言われています。

1902年、日本などの諸外国の貨幣制度に似た制度に改め、
    1圜 = 100銭
としました。 そして、1905年から、新しい貨幣との交換レートを次のように定めました。
  ・甲種 品質のいいもの:2.5銭
  ・乙種 品質の悪いもの:1銭
  ・丙種 品質が極端に悪いもの:没収
甲種でも等価交換だった訳ではありません。 旧2.5銭は新5銭に相当するはずです。 しかし、交換レートはその半分でした。
朝鮮の人たちは、悪銭の横行や、制度改定の不利益の被害を受けたことでしょう。


【参考文献】丁英夫、「亡国の白銅貨二銭五分」、『収集』2004年2月号・3月号

  2013.4.18