2000年前の金象嵌
新の一刀平五千(頭部)
紀元7年発行 16.8g 28.8mm 厚さ4.0mm
東京国立博物館の展示品
金象嵌という工芸の手法があります。
金属または木材・陶磁器の素材に薄い溝をほり、そこに薄く伸ばした金箔をはめこむ技法です。
「象」は”かたどる”を意味し、「嵌」は”はめこむ”ことを意味します。
起源はオリエントですが、日本にも早くから伝わり、埼玉古墳群で発見された国宝「金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)」の金象嵌文字は有名です。
上のコインは、前漢と後漢のはざまに1代だけ存在した新の王莽が発行したコインです。
王莽は多種多様なコインを発行したことで有名ですが、これはその一つ。 紀元7年からほんの1,2年間発行されたもので、発行当初は刀のような部分がついていました(⇒右図)。 「一刀」の金象嵌が輝いています。
その後、刀の部分が取り除かれ、上のような姿になりました。 上のコインにはその痕跡が残っています。
円形で四角い穴は始皇帝以来の中国の標準形式。 錬れた銅質で、厚さ4ミリもある分厚いものです。
2000年の歴史にもかかわらず、「一刀」の金象嵌の文字は、まるで昨日書いたかのようにきらきら輝いています。
2013.4.27