史上最高額面の紙幣
~ ハンガリーの大インフレ ~

1946年発行のハンガリーの1垓ペンゲー紙幣
100,000,000,000,000,000,000 Pengö

 1946年、ハンガリーは未曾有の大インフレにみまわれました。
 上の紙幣は1946年6月3日に発行された、1垓ペンゲー札です。
 大きな数を数えるときの単位で、万、億、兆まではおなじみですが、その上の京(ケイ)、垓(ガイ)、𥝱(ジョ)、穣(ジョウ)となると、ほとんどお目にかかりません。
 額面は、”SZÁZMILLIÓ B.-PENGÖ”と書かれています。 ”SZÁZMILLIÓ”は1億を意味します。 ”B.-”はBILLIONを略したもので、1兆を意味します。 ”PENGÖ”は貨幣単位のペンゲーです。 1億×1兆で、1垓となります。 数字で書くと、
   100,000,000,000,000,000,000ペンゲー(0が20個)
となります。
 これが、史上最高額面の紙幣と言われています(同時に10垓紙幣も印刷されましたが、発行はされませんでした)。

 右のグラフは、この当時の封書の郵便料金の推移です。
 1945年の1月には0.3ペンゲーだったのが、1946年8月1日には、
   800,000,000,000,000,000,000,000,000ペンゲー(0が26個)
にもなりました。
 この郵便料金は、800𥝱(ジョ)ペンゲーと読むことになります。
 この切手を上の紙幣で買うには800万枚必要です。 積み上げると800メートルの高さになります。 想像することさえ困難です。

 特に1946年の7月のインフレは、人類史上で最大級のものでしょう。なんと、1ヵ月間に
   2,000,000,000,000,000倍(0が15個)
にもなったのです。これは毎日3倍以上のインフレが1ケ月間続いたことになります。(3倍、6倍、9倍、12倍・・・ではありません。3倍、9倍、27倍、81倍・・・なのです!)
 朝と夕方とで値段が2倍以上になっていたという話は、決して誇張ではなかったのです。

ブダペスト 2012年春

 1946年8月、政府は通貨改革を行い、新たな貨幣単位をフォリントとしました。 旧ペンゲーとの交換比率は、
   1フォリント=1000,000,000,000,000,000,000,000,000ペンゲー(0が27個)
でした。 上の紙幣1000万枚分です。 積み上げると1000メートル分です。
 インフレは収まりました。
【参考資料】「j_deafの切手収集」

2008.3.29 「ハンガリーの大インフレ」として作成。
2015.8.10 改定して改題。