蛮族の放射(Barbarous Radiate)

蛮族の放射 3世紀後半
1.3g 11.6mm
ローマ帝国は、3世紀になると、軍人皇帝たちの乱立、スペイン銀山の枯渇などで、経済が崩壊しました。
主力通貨だったアントニニアヌス銀貨も、銀の品位が3割を切り、3世紀後半にもなると5%以下にもなりました。
属州の果てでは、小額の貨幣が払底し、日常生活にも不便をきたすようになりました。
それで、属州の人たちは自分たちで小額通貨を発行することにしました。 特にブリタニア(現イギリス)やガリア(現フランス)が盛んでした。
上の画像のコインはそのようなコインで「蛮族の放射(Barbarous Radiate)」と通称されています。
「蛮族」が作った偽金のようにも聞こえますが、決してそうではありません。
発行したのは属州の人たち、または属州政府そのものだったのかもしれません。
「放射」とは、表面の皇帝の冠の形状に由来しています。
これらは、正式の通貨の不足を補うためのもので、偽金ではありません。
しかし、あまりに小さくて粗末な作りのため、後世の貨幣学者が「蛮族の放射」と呼んだものです。
下の3枚の画像は、中央政府の発行したアントニニアヌス貨と現代の10円玉に挟まれた蛮族の放射です。この小ささが実感できます。
左から、アントニニアヌス貨 / 蛮族の放射 / 10円玉
3.8g 22mm / 1.3g 11.6mm / 4.5g 23.5mm

 2016.11.23