キューバの二重通貨制

3人民ペソコイン
1992年
8.0g 26.3mm
表面はチェ・ゲバラ
1兌換ペソコイン
1994年
8.5g 26.9mm

カストロによるキューバ革命が成功したのは1959年のことです。
それ以来、キューバは親ソ連の国となり、アメリカとは犬猿の仲となりました。
1962年のケネディ大統領のときの「キューバ危機」は、世界を震撼させました。
その後は、ソ連の援助、後ろ盾の元で何とかなっていたのですが、1991年にソ連が崩壊すると、一挙に経済危機に見舞われました。
外貨はどんどん減少しました。
そこで1994年、外貨を得るため、外国人が使う通貨とキューバ人が使う通貨を物理的にわけてしまいました。
貨幣単位はどちらも 1ペソ=100センタボ なのですが、「人民ペソ」と「兌換ペソ」の二種類にしたのです。
現代世界では数少ない「一国二重通貨制度」です。

「人民ペソ」は、キューバ国民が日常生活で使う貨幣です。 通称CUP(カップ)と呼ばれています。 紙幣の他、10ペソから1センタボまでのコインが発行されています。
「兌換ペソ」は、外国人がホテル、レストラン、長距離バスなどの支払いに使う貨幣です。 通称CUC(クック)と呼ばれています。 紙幣の他、1ペソから1センタボまでのコインが発行されています。
これらの間には、 1兌換ペソ = 1米ドル = 25人民ペソ の交換レートがあります。
(ただし、兌換ペソを人民ペソに交換するときは、1兌換ペソ=24人民ペソ。)
同じ100ペソの商品でも、キューバ人が買うときは100人民ペソ(4米ドル)で買えますが、外国人が買うときは100兌換ペソ(100米ドル)必要なのです。

ところで、これらのコイン、どちらも同じ単位です。 コインには、その区別が明確ではありません。 円形のコインの中に8角形のデザインがあれば「兌換ペソ」、なければ「人民ペソ」というのが簡単な見分け方のようです。

同じような二重通貨制は、他の国でも例がありました。
中国では、1980~1984年に、人民弊、兌換弊の紙幣が発行されていました。
北朝鮮では、1989~2002年に、人民ウォン、兌換ウォンの紙幣が発行されていました。 しかも、兌換ウォンには、資本主義国用と、社会主義国用の2種類あったそうですから、三重通貨制でしょうか。

2013年、キューバ政府は二重通貨制を廃止するとの声明を出しました。 しかし、その後なかなか進捗せず、結局廃止されたのは2021年1月1日です。 現在、1米ドル=24ペソの固定レートです。


2020.2.21  2021.4.26改訂