大理錢

 弘治通宝
5.0g 23.4mm 厚さ2.5mm
 太平通宝
5.3g 24.5mm 厚さ2.0mm


(図は吉川弘文館の『世界史地図』を利用しました)
不思議な錢の一群があります。
製作が極めて粗雑で、鋳肌粗く、外輪・内郭がきちんと仕上げされていません。 何よりの特徴は厚いのです。 通常の錢の厚さは1.2~1.3ミリが多いのですが、この錢群は2ミリ以上あります。
錢銘は、明の「弘治通宝」や「嘉靖通宝」をそのまま鋳写したものや、「太平通宝」、「水官通宝」などがありますが、これらも「弘治通宝」の「通宝」の文字をそのままにして、他の2字を別の文字に置き換えたものです。
戦前から存在は知られていましたが、あまりにも数が少ないため、古銭界であまり注目されていませんでした。

ところが、昭和40、50年代に南方から多数の古銭が舶載され、その中にこれらの錢群が多数含まれ、改めて調べると雲南地方で宋錢などとともに発見されることが多いことから、かつてこの地方にあった大理国にちなんで「大理錢」と名付けられました。
「大理国」は937年にチベット系の段氏が雲南地方に建てた国で、1254年にモンゴルに征服されるまで300年以上続きました。
明の「嘉靖通宝」は1527年の初鋳ですから、大理国がなくなって300年近くたっています。 これらの錢を「大理錢」と名付けるのは無理なような気がします。
最近の古銭書では、これを安南の「水官手」と分類しています。 しかし、大理国の故地で発行された錢、という意味で「大理錢」の名称も捨てがたい、と考えます。

【参考文献】
  静岡いづみ会、『穴錢入門 手類銭考』、平成14

 2021.1.23