突然使えなくなったインドの紙幣

インド準備銀行 1000ルピー紙幣 1996~2016年発行

 2016年11月8日、世界の注目はアメリカ大統領の選挙結果でした。 本命だったヒラリー・クリントンがまさかの敗北、よもやのトランプが当選したのです。
 その日、インドでも大変なことが起きました。 夜の8時になって、モディ首相がとんでもないことを発表したのです。
・最高額の2種類の紙幣、500ルピー札と1000ルピー札は、本日限りで、明日からは使用できません。
・銀行預金するか、または
 低額の100ルピー札、これからデザイン変更する新500ルピー札、新規に発行する2000ルピー札と交換してください。
・銀行預金からの引き出し額は1週間に20000ルピーまでです。
・100ルピー札、新500ルピー札、新2000ルピー札への交換は、1日4000ルピーまでです。
 (細かい規制内容は複雑なので省略します)

 1ルピーは当時1.6円程度。 2種類の紙幣は、日本人感覚では、5千円札と1万円札でしょうか。 ある日突然通常の使用できなくなったのです。 政府は、ブラックマネーの排除、偽金の防止などが目的と説明しましたが、余りにも突然の発表に国民は大混乱。 銀行の前には長い行列ができましたが、新紙幣はすぐに底をつき、交換もままならなくなりました。

 大混乱に対応して、規制の緩和と強化は、その後数ヶ月続きました。
   11月10日 税金の支払い、電気代・水道代の支払いは旧紙幣でも可
   11月13日 銀行からの引き出し限度額を、1週間に24000ルピーに拡大
   11月15日 同一人物が1日に何度も交換できないように、銀行の窓口で人差し指にインクをつけるようにする
   11月17日 結婚式の費用には25万ルピーまで引き出し可
   11月20日 農作物の種の購入には、旧500ルピー札を使用するように奨励
などなどです。  混乱は、翌年の2月頃まで続きました。


 当初の目的が果たせたかどうかは疑問ですが、クレジットカードやスマホによる決済が普及したのは事実のようです。

 2023.4.19