幼年王

スペイン 5ペセタ銀貨 24.5g 37.3mm 銀品位900
 日本の天皇で最も若く皇位についたのは、六条天皇(在位1165~1168)で、ご即位されたときは、わずか満7か月と11日でした。

 しかし、世界にはもっと若くして王位についた方もいました。 スペインの国王アルフォンソ13世(在位1886~1931)です。 父王が亡くなったときは、まだ母親の胎内にいました。 そして誕生と同時にスペイン王となったのです。 国王誕生の知らせに、マドリッドは大喜びしました。
 上のコインは、この幼年王の肖像を刻んだ銀貨です。  幼年というより赤ちゃんに近いです。 貨幣の肖像となった人物では世界最年少でしょう。 

 当初は母后が摂政を務めていましたが、16才から親政を始めました。 自動車の運転、乗馬、狩猟などに加えて、ポルノ映画の鑑賞が趣味だったそうです。 1921年、ヨーロッパを外遊中の日本の皇太子(昭和天皇)に、パリで昼食をごちそうしたこともありました。

 第一次大戦では、母后がオーストリア帝室、王妃がイギリス王室に繋がるため、中立を宣言し、そのため軍需産業が未曾有の利益をあげました。 しかし恩恵を受けたのは、貴族階級やブルジョアジーだけで、一般庶民はインフレに苦しみました。
 また、米西戦争に敗北、カタルーニャで民族運動が発生、植民地モロッコで反乱が発生、労働運動が激化などで治世は多難でした。
 国王としての才能は決して豊かではなかったようです。 相次ぐ失政で国民の支持を大きく失い、ついに1931年パリに亡命しました。 スペインはこのとき、事実上共和制となりました。
 アルフォンソ13世は、1941年亡命先のローマで54歳でなくなりました。

 スペインに王制が復活したのは、1975年にフランコが、アルフォンソ13世の孫ファン・カルロス1世を次のスペイン王に指名したときでした。 現国王の父君です。

 2023.7.20