面星めんほし」 と 「郭抜かくぬけ

 中世の日本では、中国より銭貨を輸入していました。 いわゆる渡来銭です。
 そして、中国からの輸入だけでは不足気味の銭を日本でも生産しました。 当初は、生産技術の未熟さと、コストをかけない作り方のため、粗悪品がでまわり、為政者はたびたび「撰銭令」を出して、粗悪な銭の使用を制限しました。
 しかし、日本で作られた銭が全て粗悪品だった訳ではありません。 しっかりした工房では、立派な銭も作られました。 基本的には、渡来銭から型をとり、その中に銅を流し込む方法(これを「鋳写銭」とよぶ)なのですが、そのような中に、特徴的なものも現れました。

 篆書元豊通宝「面星」 3.6g 23.8mm
 宝と通の間に大きな●があります。 頬にできた大きなほくろのようです。 これを「面星」と呼んでいます。
 まるで制作時のエラーのようにも見受けられますが、制作者が意図的につけたマークらしいです。
 このマークのつけられた銭は、北宋銭の「元豊通宝」または「元符通宝」を鋳写したものに限られます。
 真書元豊通宝「郭抜」 2.2g 23.0mm
 内郭(内側の郭)がほとんどありません。 詳しく計測すると、広い所でも、幅0.2ミリくらいです。 これを「郭抜」と呼んでいます。
 できるだけ軽くするためでしょうか、内側の穴をできるだけ削ったようです。 しかし、荒っぽく削ったのではなく、丁寧に削られています。 そのため、内郭の形状がピタッと正方形になっています。
 北宋銭だけでなく、いろんな銭銘の銭を鋳写したものに見られます。

 2023.11.19