清の「内廷銭」

  
清の「雍正通宝」 称内廷銭 5.8g 27.0mm
 唐の開元通宝に始まった東洋の銭は、およそ1匁(3.75g)で22~24mmくらいで一定し、近世の清王朝まで続きました。
 ところが、清の康熈通宝(1662年初鋳)以降、これより一回り大きな銭が発行されることがありました。 上の銭もそのような銭です。 通常の大きさ(3.5g、25mmくらい)より一回り大きいです。
 宮廷の内部での祝い事のために特別に発行されたとの言い伝えで「内廷銭」と呼ばれています。
 また、改元のときに1万枚だけ発行したので「満選銭」とも呼ばれる、との説がありますが、改元のときだけではなく、毎年1万枚くらいは発行されていたように思われます。
 背面の左のは「宝」、右のは「泉」の満州文字です。 両方で、この銭を発行した「戸部宝泉局」を意味します。 清朝の貨幣を発行した場所は全国に数十箇所ありましたが、戸部宝泉局は財務省造幣局とでもいう政府直轄の最大の造幣所でした。 内廷銭は、この宝泉局発行に限られるようです。



 参考までに、背面の文字と造幣所の関係は次の通りです。
(陸原保編『改訂版・東洋古銭価格図譜・全』万国貨幣洋行、昭和45 などを利用しました)

泉:戸部宝泉局 源:工部宝源局 河:可南省局 陜:陜西省局 臨:山東臨清鎮局
宣:宣府局 薊:直隷薊州鎮局 原:山西太原府局 同:山西大同鎮局 昌:江西南昌局
寧:甘粛宝寧局 広:広東省局 江:江寧省局 淅:浙江省局 東:山東省局
東:雲南東川局 福:福建省局 雲:雲南省局 蘇:江蘇省局 南:湖南省局
桂:広西桂林局 漳:漳州府局 台:台湾府局 鞏:甘粛鞏昌局 西:
晋:山西宝晋局 直:直隷省局 済:山東宝済局 黔:貴州宝黔局 川:四川省局
武:湖北宝武局 徳:湖南宝徳局 吉:吉林省局 新:新疆局 新:新疆局
伊:伊犂局
(イリー)
庫:庫車局
(クチャ)
庫:庫車局
(クチャ)
阿:阿克蘇局
(アクス)
葉:葉爾羗局
(ヤルカンド)
烏:烏什局
(ウージー)
喀:喀什局
(カシュガル)
迪:迪化局
(テッカ)

 2023.11.29