米軍の拾円伝単

米軍の拾円伝単
 「伝単」とは、中国語で宣伝用のビラのことです。 戦争中に、敵国の民衆に対して飛行機からばらまくのです。 第二次大戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争などで盛んに使われました。

 太平洋戦争の末期、米軍は盛んに日本で伝単をばらまきました。 そのような中に、拾円札を表面にしたものがあり、「拾円伝単」と呼ばれています。 「拾円伝単」の宣伝の言葉は4種類ほど確認されています。
 そのひとつには次のように書かれています:

   五千円
   この金で年貢を納めよ。軍閥は諸君の納めた税を浪費して居る。
   軍閥は此の戦争に諸君一人に対して五千円の大金を費やして居る。
   戦争が一日でも長く続けば続く程多くの軍閥は諸君の金を乱費するのである。

拾円札で買えるもの
木綿木炭
昭和5年上等米2.5斗8反4俵
昭和12年下等米2.5斗5反2.5俵
昭和20年?ヤミで上等米1.2升買えない買えたとしても少量
 冒頭の画像の品は、もう一つの例です。
 世界最高の強国を相手に絶望的な戦をしているため、物価が高騰していることを書いています。 右の表はそれを少しわかりやすく書き直したものです。


 ばらまかれた伝単は当然警察が回収し、個人で持つことは御法度でした。 しかし、国民の中には、ひそかにこれを読んだ人もいたようです。 永井荷風の日記『断腸亭日乗』には、昭和20年の5月ころにこれを読んだことが書かれています。


 【参考文献】 『日本紙幣収集事典』、原点社、平成17
 2024.2.5