ニュートンの貨幣リスト

17th July, 1702.
To the Rt. Honble. Sidney Lord Godolphin Ld. High Treasurer of England.
MAY IT PLEASE YOUR LORDP.,
According to yor Lordps direction we have examined the values of several forreign coyns & endeavoured to inform our selves of the values of Gold in proportion to Silver in several nations & considered the ways of preserving the coyn.
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All wch is most humbly submitted to yor Lordps great wisdom.
J. STANLEY.
IS. NEWTON.
JN. ELLIS.
MINT OFFICE, 7 July 1702.
発行者銀貨名重さ
(グラム)
価値
(ペンス)
フランスEcu, 60SolsTurnois27.1554.13
ネーデル
ランド
地方
オランダDucaton, 63Styvers32.9065.59
Patagon, RixDoller, 50Styvers26.2252.28
LyonDoller, Ducaton?21.9243.70
3Guilder, 60Styvers31.3362.46
ゼーランド10Schelling, 60Styvers31.2161.21
フランドルDucaton, 60Sols, 60Patars33.1866.15
Patogon, CrossDoller, 48Patars26.5452.91
リエージュ司教Doller, Patagon26.3252.48
ケルンDucaton32.7065.20
Doller26.3552.53
スペインPiastre, 8-10Reaus27.0353.88
NewSevil Piece of Eight21.6243.11
ポルトガルCrusado, 400-480Res17.2134.31
イタリアナポリDucat, 5Tarins, 10Carlins20.2840.43
ローマEscuti, Ecu, 10Julios32.01
Teston, 3Julios9.1318.21
フィレンツェDucat, 7Livres32.3964.57
Crown, 0.8Ducat25.9251.66
ジェノアCroisat, 7.5Lires39.4978.74
ヴェネティアCrusat of StMark31.49
Ducat20.2840.42
ドイツハノーヴァー選帝侯Gulden, 2/3Doller14.1228.14
サクソニー選帝侯Gulden, 2/3Doller14.1128.12
ツェル公Gulden, 16GuteGrosh13.8427.60
ブランデンブルク選帝侯Gulden, 2/3Doller14.0328.00
OldGulden, 24-26MarienGrosh15.2630.41
ヒルデスハイム司教Gulden, 24-26MarienGrosh15.1530.21
デンマーク4Mark16.2832.45
スエーデン8Mark31.3662.52
オーストリーRixdoller27.0153.78
ポーランドRixdoller27.2954.40
ドイツ
旧貨幣
ハンブルクOldBanckDoller27.5554.92
ダンツィヒOldDoller27.2354.27
ニュルンベルクOldDoller27.8655.55
ハノーヴァーOldDoller27.7455.30
リュネンベルクOldDoller27.4154.65
ブランデンブルク選帝侯OldDoller27.6755.17
リューベックOldDoller27.8555.52

 ニュートンといえば物理学者として有名ですが、1696年にロンドンの造幣局長官になり、金貨・銀貨の重さや品位について詳細に取り決めたことも知られています。

 そのニュートンが当時のヨーロッパ世界の金貨・銀貨の重さや品位を測定し、イギリス貨幣との交換レートを記述した報告書があります。
   "REPORT OF THE OFFICERS OF THE MINT ABOUT THE PRESERVATION OF THE COYNE."
というタイトルで、1702年に書かれたものです。

 このころのイギリスの通貨単位は、
  1ポンド=20シリング
  1シリング=12ペンス(単数形はペニー)
でした。一見複雑そうにみえますが、当時のヨーロッパ世界の中ではこれでもシンプルな制度です。

 古代から中世にかけて金は銀の10倍くらいの価値でしが、17世紀ころからアメリカ大陸の大量の銀が流入したため、このころは15倍くらいに大きく変化していました。

 このような中で、ニュートンは
  1ポンド = 金4分の1オンス(7.78グラム)
  1シリング = 銀6.02グラム
と定め、諸外国の貨幣の重さと品位を測定し、交換レートを計算しました(右の表がそれですが、読みやすくなるように多少編集しています。原典では、重さは当然ヤードボンド法で書かれています)。
 また金の(銀に対する)価格が、イギリスではフランスやドイツに比べて数%高く、スペインやポルトガルに比べると数%低いことを報告しています。
 (もっとも、これは銀の価値を低すぎる設定だったようで、この10年後の1712年には
   3ポンド17シリング9ペンス = 金1オンス
と改定しています。1ポンド=金8.00グラムになります。)

発行者金貨名重さ
(グラム)
価値
(ペンス)
フランスLewi D'or6.70206.8
スペインPietole6.70206.8
ポルトガルMoeda10.66329.1
イタリアOldPisotle6.53201.5
ヴェネティアSequin Chequin, Zacksen3.79117.1
教皇領Pistole6.69
ピアチェンツァPistole6.54
ミラノPistole6.66
ジェノアPistole6.74
サヴォイPistole6.77
ハンガリーDucat3.72114.7
ネーデルランドオランダDucat3.70114.3
バーメベルク司教Ducat3.72114.7
ドイツハノーヴァー選帝侯Ducat3.68
ポーランドDucat3.67113.2
スエーデンDucat3.47
デンマークDucat3.70114.3

 "Dollar" ではなく "Doller" 、"Coin" ではなく "Coyne" となっているところも興味深いです。

 蛇足ながら、ニュートンの造幣局長官としての年俸は2000ポンドでした。このころの庶民の年収が20~40ポンドでしたから、その高給さに驚嘆します。

2009.2.21