ギリシャ数字


40ヌンミ銅貨
21.0g 37~38mm

20ヌンミ銅貨
9.0g 24~27mm

10ヌンミ銅貨
4.2g 20~23mm

5ヌンミ銅貨
2.3g 16mm

日本人におなじみの数の表し方(記数法)は、「アラビア数字(算用数字)」、「漢数字」、「ローマ数字」の三種類でしょう。

ところで、これらの他に、「ギリシャ数字」というのがあります。 すべてのアルファベットに固有の数値を対応させる方法です。
具体的には次のとおりです。
  Α(1)  Β(2)  Γ(3)  Δ(4)  Є,E(5)  Ϝ,Ϛ(6)  Ζ(7)  Η(8)  Θ(9)
  Ι(10)  Κ(20)  Λ(30)  Μ(40)  Ν(50)  Ξ(60)  Ο(70)  Π(80)  Ϙ,Ϟ (90)
  Ρ(100)  Σ,C(200)  Τ(300)  Υ(400)  Φ(500)  Χ(600)  Ψ(700)  Ω(800)  Ͳ,Ϡ (900)
例えば 311は”AIT”と表記します。 999までの数しか表現できませんが、少ない数の文字を有効利用しています。  Ϝ/Ϛ(6), Ϙ/Ϟ (90), Ͳ/Ϡ (900)の3つの文字は、現代ギリシャ語では使われていない文字です。
古代ヘブライ文字や、(アラビア数字になる前の)アラビア文字、(ロシア文字の前身の)キリル文字でもよく似た方法が使われていました。

上の4枚のコインは、ビザンチン帝国のユスティニアヌス帝(在位527~565年)の発行した40ヌンミ、20ヌンミ、10ヌンミ、5ヌンミ銅貨の裏面です。 大きなギリシャ数字で額面が表記されています。 「ヌンミ(Nummi)」は当時の貨幣の最小単位「ヌンムス(Nummus)」の複数形です。
興味深いことに、40ヌンミ銅貨には”XII”の文字が見えます。 これはローマ数字の12で、皇帝の即位12年(西暦538年)を意味しています。 ギリシャ数字とローマ数字が共存しているのです。 10ヌンミ銅貨にも”XXIIII”のローマ数字があります。

下のコインは、紀元前後に現在のイラン・イラク地方を支配していたパルティアの銀貨です。
座している人物の膝の前に”AIT”と刻まれていますが、これは発行年のセレウコス歴311年(西暦紀元前2~1年)を意味しています。
   パルティアの銀貨
セレウコス暦311年=西暦紀元前2/1年発行

この「ギリシャ数字」は現在でもギリシャで使われているそうです。 現在では、数を表す特殊記号(ʹと͵)と組み合わせて、1000以上の数も表現できるように改善されています。

2011.5.20   2022.6.7