『貨幣損傷等取締法』


 ●『貨幣損傷等取締法』 昭和22年12月4日
 第1項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
 第2項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
 第3項 第1項又は前項の規定に違反した者は、これを1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。


日本には、「貨幣損傷等取締法」というのがあり、硬貨の損傷や溶解は禁止されています。
2006年11月、大阪のマジッシャンと手品用品販売業者が、500円玉に穴をあけて販売していたので逮捕されました。
このときは、憲法21条で保証された表現の自由によって保護されるべきものではないかと、最高裁まで争われましたが、結局有罪が確定しました。
2017年10月、東京で発生した事件では、裏表同じ硬貨をつくるなど、いかさま賭博用とも思える事件でした。

そもそもこの法律は、終戦直後に金属資材が高騰したときに、当時の50銭、1円などの硬貨を鋳つぶしてしまう事件が多発し、それに対応するために制定されたものです。 現在では、制定当初の目的とは大きくかけ離れた存在になっています。 一度制定した法令を廃止することの難しさの代表例になっています。

外国では、必ずしもこのような法令はありません。 アメリカやイギリスの観光地では、硬貨を投入するとそれをメダルに変形する機械が置いてあるところがあります。 下の画像は、スコットランドの美術館で、1ペニー銅貨を投入して作成したメダルです。
ところで、上の法律は硬貨に対してのみ有効です。 紙幣に対しては何の規制もありません。 燃やそうと、破いてしまおうと、何の罪にもなりません。 このことに関して、紙幣の製造元の国立印刷局のHPでは、次のようなQ&Aを載せています。

Q。お札を折り紙として使ったり、落書きをしたりすると、何か問題になるのでしょうか?
A。法令上、直ちに違法な行為とは言い切れませんが、皆様が傷みの激しいお札や、本物にあるはずのない書込みや印字がされている変なお札を手にしてしまった場合、偽札かどうかの見分けがつきにくくなります。また、ATMや自動販売機で使えなかったりするなどのトラブルのもとになります。 お札を切り刻んだり、燃やしたりして損傷する行為はもちろんのこと、ちょっとしたいたずら程度と思われる行為も、お札を使う場面では大きな支障となることがあります。お札はみんなで使うものですから、大切に使ってください。

 2018.7.24