クラッドコイン、バイメタルコイン
アメリカ50セント
ⓐ銀、後に白銅
ⓑ銅
●クラッド・コイン
クラッドコイン(clad coin)とは、コインを複数の素材でサンドイッチ風に重ねたものです。
これを最初に考え出したのは、アメリカ人のようです。
戦前のアメリカの50セントコインは、ほぼ純銀の銀貨でした。
ところが戦後金属相場が値上がりして、50セント銀貨の素材価値が50セントを超えようとしました。
ここで、普通の国なら、小さくするとか、素材を全く変えるとかするのでしょうが、みかけにこだわったのでしょうか、表面と裏面だけを銀にし、内部は銅という、三層構造にしてしまったのです。 1965年のことです。
さらに、1971年になると、表面と裏面を白銅(銅+ニッケル)にしてしまいました。 これが現在でも続いています。
25セントや10セントコインもほぼ同じ経過をたどっています。
日本でも、2015年に発行された「新幹線鉄道開業50周年記念100円貨」にこのクラッド手法が採用されています。
イタリア500リラ
ⓐステンレススチール
ⓑアルミ黄銅
●バイメタル・コイン
クラッドコインが、素材を安価にするためだったのに対して、パイメタルコイン(bimetal coin)は偽造防止とデザインの新規性にあるようです。
上下に層にするのではなく、外周と内部を色の違う素材にしたものです。
最初に発行されたのは、1982年のイタリアの500リラコインのようです。 イタリアのコインは、外周部がステンレススチール(鉄に一定量のクロムを加えたもの)、内部がアルミ黄銅(銅+アルミ+亜鉛)でした。
フランス20フラン
ⓐアルミ黄銅
ⓑステンレススチール
この形式のコインは、その後イギリス、メキシコ、ハンガリー、タイなど、たくさんの国が発行しています。
1988年にフランスが発行した20フランコインは、上から見て3つのリング構造としました。 「トリメタル」とでも呼ぶべきでしょうか。
2ユーロ
ⓐ白銅
ⓑニッケル黄銅
ⓒニッケル
(1ユーロはⓐとⓑが逆)
●バイカラー・クラッド・コイン
バイメタルとクラッドコインを組み合わせたのがバイカラー・クラッド・コイン(bicolor clad coin)です。
1999年のユーロコインの2ユーロと1ユーロコインに初登場しました。
上から見ると、外周と内部の2つの円ですが、内部は上・中・下の3階層に分かれています。
中心部に相当する、内部の中階層には強磁性のニッケルが使われています。 この強磁性が、コインやコイン読み取り機の贋造をやりにくくしているそうです。
現代コインの潮流ともいうべき手法で、この手法を採用する国多く、日本でも
2008年~ 「地方自治法施行60周年記念硬貨」、
2021年~ 新しい500円硬貨
などに採用しています。
2022.3.2