『少年朝日年鑑 1949年版』
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『少年朝日年鑑』 朝日新聞社 1949
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『少年朝日年鑑』は、1949年(昭和24年)の創刊以来、『ジュニア朝日年鑑』、『朝日学習年鑑』と名を換えて現在でも続いています。
対象は15才前後でしょうか。 小学校の高学年か、中学校の低学年にふさわしい内容です。
創刊された昭和24年は、戦後インフレのさなかです。 少年たちにインフレの現実をやさしい言葉で解説しています。
まずは、インフレそのものの説明です。 物価の曲線を「苦しいインフレ登山」と表現しています。
物の値段はずっと上昇しています。 特に22年12月は、年越しのものいりが多くなり、とんがり山のようになっています。
とんがり山を登り切ると少し低くなりますが、また少しずつ上昇し、7月になると年末のとんがり山の頂上より高くなっています。 「苦しいインフレ登山」の名にぴったりです。
またこのグラフから、いわゆるエンゲル係数についても説明しています。 食糧費が家計支出の6割から7割をしめているのです。
次のグラフは、政府配給のものだけでは不足するため、ヤミで購入する割合を調べたものです。
配給で補われるのはほんの1~2割、しかもこの状況がずっと続いています。 この状況を「ヤミ夜はつづく」と表現しています。
特に年末のものいり時は、増えた分をそのままヤミで調達しています。
(ヤミ米を拒否した東京の裁判官が亡くなったのは、まさにこのグラフの中の22年10月のことです。)
しかし、配給物資も徐々にではあるが増えつつあるようです。 特に光熱費はヤミからの調達は減少していっています。
そして、このようなインフレの中、企業が社員の給料を引き上げなければならない状況を示したのが次のグラフです。 産業別の線グラフが束のようになってうねっている状況を「伸び上るミミズの塊り」と表現しています。
企業は苦しいなか、給料を上げなければならないのです。
ガス・電気・水道業のように労働組合が発達している業界ほど、給料も高くなっています。
また、23年の後半から給与が急上昇している状況を、「決勝点近くなった競馬の馬のように、各産業の給料とも、いっさんにかけだしている」と表現しています。 (少年向きでなく、大人の表現です)
ともあれ、戦争には全く責任のなかった少年たちに、インフレなどをやさしい言葉で説明しています。 筆者は、学者さんではなく、中学校の社会科の先生かな、と想像しています。
2024.5.17