島 銭(しません)
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”島銭”という言葉は、あまりなじみのない言葉です。
言葉の由来もはっきりしません。”辺島で蛮夷が作った”という説や、出所素性の不明な古物を”しまもの”と呼んでいたからという説などがあります。
鉛のような柔らかい金属を彫刻刀で彫り、それで型をとって作ったようです。全く新しい銭名や、文字を知らない人が書いたかのように、文字が大きく崩れているのが特色です。
ただし、大きさの変化はあまりなく、揃っています。
最近の研究結果では、14世紀中頃の比較的短い期間に、日本で作成されたものとされています。
平成9年に岩手県で発見された3.8万枚の出土銭には13枚の島銭が含まれていましたが、その中に下の宋開聖宝、淳化元宝と同じものがあります。(文献④)
天平通宝 23.0mm 2.1g
「天平」というと、日本の天平時代を連想させますが、そうではないようです。
北宋の「太平通宝」を元にしたのでしょうが、”太”が"天”に変化しています。
宋開聖宝 23.7mm 1.8g
全く新規の銭名です。
元開通宝 23.4mm 2.4g
これも全く新規の銭名です。
島銭にしては珍しく背輪がしっかりしています。
淳化元宝 切銭手 23.7mm 2.1g
北宋「淳化元宝」の草書体のものが元になっています。
「切銭手」とは、『昭和泉譜』で名づけられたものです。総体に薄肉で、広穿(穴が大きい)になっています。
咸道通宝 切銭手 22.9mm 1.8g
遼の「咸雍通宝」の字が変化したものでしょうか。
皇宋通宝 打製 23.3mm 1.6g
鋳造貨幣でなく、珍しく打製です。字画の膨らみ具合を観察してください。
この手の打製銭には別に永楽通宝などもありますが、いずれも純銅に近い赤褐色です。
これまでの6つは、日本製と言われているものですが、次の3つはそうではないようです。
開元通宝 左文 24.4mm 3.7g
「左文」とは、印鑑を見ているように、左右が全く逆になっているものです。「左文」と呼ばず、「翻字(ほんじ)」と呼ぶこともあります。
不能読銭 24.0mm 2.4g
何と言う字か、全く読めません。僅かに向かって右がやっと「寶」らしくみえます。
しかし、彫りの深いしっかりした製作です。
永楽通宝 母銭 24.3mm 2.7g
島銭にも母銭らしきものがあります。背の輪・郭がはっきり整形されています。
この品は、インドネシアのバリ島にあったものです。
参考文献
①朽木昌綱(福知山のお殿様)、「古今泉貨鑑」、寛政10(1798)
②平尾賛平、「昭和泉譜」、昭和7(1932)
③広瀬輝夫、「舶載島銭の分類」、雑誌「収集」連載、1979-1980
④東北中世考古学会編、「中世の出土模鋳銭」、高志書院、2001
2001.7.22 2004.3.7 Update 2007.5.18 Update