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江戸時代 値段史

戦国末期から江戸幕末までの物価の推移です。
地域差(都市部と田舎、生産地と消費地)、年次差(豊作の年と不作の年)、季節差(収穫前と収穫後)などは、現代人の想像以上です。
そのような中、いろいろな資料から、大まかな推移をまとめてみました。
できるだけ、江戸や京阪の値段を掲載するように努めました。
少しでもご参考になれば幸いです。
ただし、私的な試作品です。 決して学術的な利用はされないよう、お願いいたします。

 1. 金・銀・銭の種類と相場
 2. お米の値段
 3. その他の食べ物の値段
 4. 労賃、サービス料
 5. 生活用品の値段
 付. 人口・貨幣流通高など

1. 金・銀・銭の種類と相場
将軍重要人物金貨
(小判の純金量)
銀貨
(銀品位)
銭貨金1両銀1匁
1550天文19義輝渡来銭・鐚銭1400文46文
60永禄3  甲州金など  石州銀など46文
70元亀元義昭織田信長銀7.5両
(銀32匁)
精銭1500文精銭46文
80天正8
9018豊臣秀吉太閤金など太閤銀など
1600慶長5 徳川家康150文
1015秀忠慶長金(15.2g)
小判と一分金
慶長銀(800)
丁銀と豆板銀
銀50匁永銭1000文
鐚銭4000文
永銭20文
鐚銭80文
20元和6銀60匁3600文60文
30寛永7家光53文
4017寛永通宝と渡来銭62文
50慶安3銀63匁3900文62文
60万治3家綱60文
70寛文10寛永通宝71文
80延宝8綱吉83文
90元禄3銀60匁
170013荻原重秀元禄金(10.0g)元禄銀(640)銀60匁4000文67文
10宝永7家宣
家継

新井白石
宝永金(8.8g)
正徳金(15.5g)
宝永銀(500/400/320)
正徳銀(800)
銀60匁3900文65文
20享保5吉宗享保金(15.3g)享保銀(800)銀46匁4600文100文
3015銀59匁5100文83文
40元文5元文金(8.5g)元文銀(460)(鉄銭も)銀59匁3000文51文
50寛延3家重銀59匁4200文73文
60宝暦10家治田沼意次銀64匁4200文65文
70明和7(4文銭も)銀66匁5300文74文
80安永9(二朱銀も)銀59匁6100文102文
90寛政2家斉松平定信銀56匁5900文103文
180012銀63匁6400文105文
10文化7銀63匁6900文107文
20文政3文政金(7.3g)
(二分金も)
文政銀(360)銀59匁6800文101文
30天保元(一朱銀も)銀65匁6600文106文
4011家慶水野忠邦天保金(6.4g)
(一分銀も)
天保銀(261)寛永通宝と
天保通宝
銀63匁6900文111文
50嘉永3
家定
銀62匁6400文104文
60万延元家茂安政金(5.1g)
万延金(1.9g)
安政銀(135)(鉄4文銭も)銀73匁6500文92文
65慶応元
慶喜
(文久永宝も)銀91匁6400文70文
70明治3大隈重信通用停止10000文
参考 2020(令和2)純金16.5g 11.1万円純銀3.75g 300円
「金1両」 主に江戸での相場。 太字は公定。
「銀1匁」 主に京・大坂での相場。


2. お米の値段
大坂米相場
米1石
京都小売値
米1石
幕府張紙値段
米1石
江戸小売値
米1升
備考
1550天文19500~1500文
60永禄3
70元亀元
80天正8

金10両=米38石

9018

金10両(天正大判1枚)=米35~36石。

1600慶長5銀10匁(金0.3両)(10文)

( )内は推測値。

1015銀18匁
20元和6銀29匁
30寛永7銀25匁
4017銀37匁
50慶安3銀32匁
60万治3銀69匁1.40両
70寛文10銀56匁1.01両
80延宝8銀67匁1.34両
90元禄3銀70匁0.76両
1700131.24両
10宝永7銀77匁0.94両
20享保5銀61匁1.15両
3015銀30匁銀49匁0.61両25文

享保15(1730)、米価安で武士階層困窮。

40元文5銀78匁1.34両
50寛延3銀60匁銀78匁1.04両30文
60宝暦10銀52匁銀64匁0.84両
70明和7銀69匁1.11両100文
80安永9銀46匁銀55匁0.91両

天明4~7(1784~87)、天明の飢饉で1升200~300文に高騰。

90寛政2銀55匁銀70匁0.97両
180012銀71匁銀92匁1.23両
10文化7銀58匁銀66匁0.88両120文
20文政3銀60匁銀56匁0.90両
30天保元銀78匁銀90匁1.14両150文

天保8(1837)、天保の飢饉で一時銀200匁以上に高騰。

4011銀66匁銀76匁1.07両
50嘉永3銀142匁銀134匁1.23両 
60万延元銀148匁銀147匁1.31両200文
65慶応元銀200~400匁銀401匁2.00両300文

慶応2(1866)、大坂商人の投機により、一時銀1000匁以上に高騰。

70明治37~10円10銭
参考 2020(令和2)6.4万円640円
「大坂米相場」 大坂における肥後米などの取引相場。 その年の平均値または中央値。
「幕府張紙値段」 旗本・御家人が俸禄の米を現金化するときの幕府公定価格。 毎年春夏冬の3回発表されるが、その平均値。
    100俵(35石)あたりの値段を1石あたりに換算。
「江戸小売値」 江戸では「銭100文あたり米○升○合○勺」で小売りされるが、それを「米1升あたり銭○文」に換算。


3. その他の食べ物の値段
酒1升塩1升砂糖1斤豆腐1丁卵1個そば1杯
1550天文1910~20文12~16文
60永禄3
70元亀元米1~2升米5合~1升
80天正8
9018
1600慶長520~30文5~10文4~6文
1015
20元和6
30寛永76文
4017
50慶安340~60文10~20文
60万治35~8文
70寛文108文
80延宝8
90元禄360~80文
170013銀2匁
10宝永710~20文
20享保5銀4匁16文
3015
40元文5
50寛延3
60宝暦10120~200文
70明和7
80安永920~50文20~30文
90寛政2
180012
10文化7
20文政3
30天保元30~40文
401140~50文
50嘉永3200~300文12文
60万延元60文銀8匁16文
65慶応元500~600文100文銀12匁70~80文32文20~24文
70明治310~12銭2~4銭4~6銭5~8厘
参考 2020(令和2)870円43円120円70円22円680円
「酒」 地域差や品質差が大きい。 表で示したのは江戸での比較的安価な酒。
「豆腐」 豆腐の大きさは地域差があった。 表は江戸の値。


4. 労賃、サービス料
大工の日当人夫の日当中間の年給下女の年給湯銭木賃宿賃
(素泊まり)
旅籠宿賃
(1泊2食)
1550天文19100文
60永禄3
70元亀元
80天正8
9018米1斗
1600慶長5銀1匁1文
10153文
20元和64~5文4文
30寛永70.5両6文
4017銀2~3匁
50慶安3
60万治340~60文6文
70寛文101.5両1.0両
80延宝812文
90元禄320~30文
170013100~200文
10宝永71.0~1.5両
20享保580~100文2両
3015
40元文52両以上
50寛延3100文
60宝暦101.25~2両
70明和7
80安永96~8文
90寛政2
1800128~10文30~50文
10文化7銀3~5匁200~350文2~3両
20文政3
30天保元2.5両3両
4011
50嘉永33~4両200~250文
60万延元250~400文
65慶応元銀5~6匁400~500文3~4両12~24文700~800文
70明治340~50銭20~30銭8厘
参考 2020(令和2)2.1万円470円1.5万円
「大工の日当」 銀目で示されているが、銭で支払われることが多かった。(江戸後期は、銀1匁=銭108文などで換算。)
「人夫の日当」 都会と地方の格差は大きい。 通常、お米2~3升分のことが多い。
「中間の年給」、「下女の年給」 衣食住付きの給与。 江戸中期の年2両は、1日あたり33文に相当する。

5. 生活用品の値段
木綿 1反木炭 1俵番傘 1本わらじ 1足杉原紙 1帖灯油 1升
1550天文19
60永禄320~60文80~100文
70元亀元
80天正8米2~3升米10~15升
9018
1600慶長5
1015銀5分~1匁
20元和6銀2匁
30寛永7
4017
50慶安33文
60万治3
70寛文10
80延宝84文15~25文
90元禄3銀3~4匁
170013
10宝永7
20享保5銀6匁銀3匁
3015銀3匁
40元文5100文
50寛延35文
60宝暦10銀3~4匁
70明和7
80安永9200文7文
90寛政210文
180012200~300文10~15文
10文化7
20文政320~30文
30天保元30~40文
4011銀8~9匁銀5匁銀4匁
50嘉永3銀5~6匁15~20文
60万延元銀22~28匁銀7~8匁400~500文
65慶応元銀60~100匁銀20~30匁30文40~100文銀10匁
70明治330~40銭
参考 2020(令和2)1000~2000円7000円紳士傘 
1700円
杉原紙50枚
1600円
170円
「木炭」 1俵の重さは、およそ4貫だが、場所と時代によって変化があった。
「番傘」 庶民が雨具として使うようになったのは江戸中期以降。 蛇の目(主に女性用)は、番傘の3~4倍の値段。
「杉原紙」 1束=10帖で、1帖は48枚(20枚とする説もある)。 半分に切ったのが「半紙」
「灯油」 江戸中期以降は、京での消費者物価。

付. 人口・貨幣流通高など
人 口石 高貨幣流通高 (万両)
金貨計数銀貨秤量銀貨銭貨藩札
1550天文191550年 1029万人
60永禄3
70元亀元
80天正8
9018
1600慶長51600年 1227万人慶長3 1851万石
1015
20元和6
30寛永7寛永 2217万石
4017
50慶安31650年 1750万人正保 2362万石
60万治3
70寛文10
80延宝8
90元禄31695年106333311610
1700131700年 2829万人元禄 2591万石
10宝永7
20享保51721年 3128万人
30151736年1084102030340
40元文5
50寛延31750年 3101万人
60宝暦10
70明和7
80安永9
90寛政21792年 2987万人
180012
10文化71818年1911593421354100
20文政31822年 3191万人
30天保元天保 3056万石1837年23701680536374355
40111840年 3110万人
50嘉永3
60万延元1858年28322054390427665
65慶応元
70明治31872年 3481万人明治5 3237万石1869年743252393514433000
参考 2020(令和2)1億2615万人5180万石日銀券 118.3兆円、 補助硬貨 5.1兆円


【メモ帳】
永禄12年 (1569) 織田信長が堺に要求した矢銭、錢2万貫(金1.3万両相当)。
天正6年5月(1578) 上杉謙信没。春日山城の在庫金は、金1126枚1両3分1朱(金1万両余)。
天正9年  (1581) 穴山梅雪が、信長に降伏したときに出した礼金、金2000枚(金2万両)。
天正10年6月(1582)本能寺の変のとき、羽柴秀吉が姫路城に蓄えておいた金、金8000両、銀750貫目、米8.5万石。
慶長3年8月(1598) 豊臣秀吉没。遺産は金9万枚、銀16万枚(合計金106万両換算)。
慶長6年(1601)~元禄8年(1695) 江戸幕府、金貨銀貨(「慶長金銀」)を発行。 大判16565枚、小判・一分金1473万両、銀貨120万貫。(合計金3900万両換算)。
元和元年5月(1615) 大坂夏の陣。大坂落城時、金2.8万枚、銀2.4万枚(合計金30万両換算)が接収される。
元和2年4月(1616) 徳川家康没。遺産は600万両。 江戸に400万両、駿府に200万両。
元和2年  (1616) 名古屋城の金鯱完成、慶長大判1940枚を使う。
寛永11年 (1634) 日光東照宮の造営。1年5ヶ月の歳月と、金56.8万両、銀100貫、米1000石を費やす。
寛永13年(1636)~万治2年(1659) 江戸幕府、全国15箇所で「寛永通宝」を発行(いわゆる「古寛永」)。 30億枚(75万両換算)。
元禄元年  (1688) 井原西鶴『日本永代蔵』を刊行。これによると銀500貫目以上の財産を持つ者が「分限」、1000貫目以上が「長者」と呼ぶ。
元禄11年 (1698) 寛永寺根本中堂の造営工事で、紀伊国屋文左衛門50万両の利益を得る。
宝永2年5月(1705) 大坂の淀屋が闕所となり、財産没収。 金12.8万両、銀8.5万貫、錢27万貫(合計金162万両相当)。
             他に、貸し銀、土地家屋、骨董品、船など。
享保元年  (1716) この年の幕府の天領は408.9万石。租税は米107.4万石と金11.5万両。
文政11年 (1828) 鹿児島藩の調所広郷、500万両の借金を踏み倒す。
安政4年8月(1857) 幕府、オランダより咸臨丸を10万両で購入。
安政6年  (1859) この年の鳥取藩の参勤交代の費用。江戸⇒鳥取、21泊22日、1957両。
安政のころ?       井伊直弼の命により、赤城山に埋めたとされる御用金、360万両。 もちろん伝説。
文久2年8月(1862) 生麦事件発生。10月に薩摩藩がイギリスに支払った賠償金は、2.5万ポンド(6.03万両)。
慶応2年  (1866) 箱館に五稜郭完成。 総工費は、10万4090両。
慶応3年  (1867) 長岡藩が、イギリス商館から購入したアメリカ陸軍のガトリング砲1門、12000両。
慶応4年7月(1868) 会津・庄内・米沢の3藩が、合同してオランダ商人より買い入れた銃3000丁と弾丸150万発、10万6541両余。
慶応4年8月(1868) 徳川宗家が駿河70万石に引っ越しする際、新政府より下賜されたお金、金2万両と米3万俵。
明治4年  (1871) 明治政府は新たな藩札の発行を禁止。 このときに流通していたのは、244藩、1694種、総額3855万円。


【参考文献】
  草間直方、『三貨図彙』、文化12 (復刻版、白東社、昭和7)
  喜田川守貞、『近世風俗史』、天保ころ (岩波文庫、平成8)
  森鴎外、『金銀銅價考』、大正初期  (『鴎外全集20』、岩波書店、昭和48)
  三田村鳶魚、『江戸生活のうらおもて』、昭和5 (中公文庫、『鳶魚江戸文庫30』、平成11)
  小葉田淳、『日本貨幣流通史』、刀江書院、昭和5
  中沢弁次郎、『日本米価変動史』、柏書房、昭和7
  岡田稔、『銭の歴史』、大陸書房、昭和46
  「歴史読本臨時増刊」、『お金の百科事典』、新人物往来社、昭和49
  新保博、『近世の物価と経済発展』、東京経済新報社、昭和53
  小野武雄、『江戸物価事典』、展望社、昭和55
  岩橋勝、『近世日本物価史の研究』、大原新生社、昭和56
  『貨幣年表』、日本銀行金融研究所、昭和56
  村上直ほか、『日本史資料総覧』、東京書房、昭和61
  京大日本史辞典編纂会編、『新編日本史辞典』、東京創元社、平成2
  成松佐恵子、『庄屋日記にみる江戸の世相と暮らし』、ミネルヴァ書房、2000
  『新体系日本史12 流通経済史』、山川出版社、平成14
  三好一光、『江戸生業物価事典』、青蛙房、平成14
  小柳津信郎、『近世賃金物価史史料』、成工社出版部、平成18
  岩橋勝、『日本のお金の歴史』、ゆまに書房、2015
  Wikipedia
  その他
  現代の物価は、総務省統計局、「東京都区部の小売物価統計調査」などを参照

2016.12.27 初版  その後度々改定