アラビア文字のコイン

アラビア語を母国語とする人口は2.3億人あり、これは(中国語、英語、ヒンディー語、スペイン語につぎ)世界第5位です。 アラビア語を公用語とする国も30か国ほどあり、そのうち20か国ほどのコインにはアラビア文字が書かれています。
イスラム建国当初のコインについては、「イスラームのディルハム銀貨」で既に紹介していますが、ここでは現代コインのアラビア文字について少しだけ紹介してみます。
 ● アフガニスタンのコイン 
下のコインは、1961年(イラン暦1340年)発行の1アフガニ・コインです。

中央の大きな ١ は、額面数字の「1」です。
その他の文字とその意味は次のとおりです。
   表上部 يو額面 one
   表下部 افغانۍ貨幣単位 afghani
   裏上部  افغانستان 国名 afghanistan
   裏下部 ١٣٤٠発行年 1340



 ■ アラビア文字の書き方

アラビア文字のアルファベットは、次の28字が基本です。 (下の行はおおよその音価です。あまり厳密ではありません)
ي و ه ن م ل ك ق ف غ ع ظ ط ض ص ش س ز ر ذ د خ ح ج ث ت ب ا
a  b  t  th  j  h  kh d dh r z  s  sh   s'  d'  t' z' a' gh  f  q  k  l  m n h w  y
アフガニスタン(Afghanistan)の文字をアラビア文字で並べると、 ا ف غ ا ن س ت ا ن となります。
右側から、「afgh anstan」の文字です。 (アラビア文字は右から左へ書きます)
アラビア文字は、単語の先頭に来る場合、途中に来る場合、末尾に来る場合で、文字の形が微妙に変化します。
上の文字列を1つの単語につなげると、 افغانستان となります。 غの文字が ـغـ に変化しています。



 ● カタールのコイン 
下のコインは、1978年(イスラム暦1398年)発行の5ディルハム硬貨です。

表面中央の ٥ が目立ちますが、これは額面数字の「5」です。
その他の文字とその意味は次のとおりです。
   表中央部    ٥
دراهم
額面 5 dirhams
   裏上部 ١٣٩٨・١٩٧٨ 発行年 1978 ・ 1398
   裏下部 قطَر‎ دولَة 国名 State of Qatar


国名カタール(Qatar)のアラビア文字は、ق ط ر(右からq,t,r) ですが、長く伸ばす発音を強調するための、 ــَـ を挿入することにより、قـطــَـر のようになっています。

 ■ アラビア数字
アラビア語の数字は、٠١٢٣٤٥٦٧٨٩  の10文字だけです。 左から、0123456789の文字です。
インドから伝わったゼロを含む10種類だけの文字で、無限の数を表記できる画期的な発明です。
額面数字でよくあるのは、 ١(1)、 ٥(5)、 ١٠(10)、 ٢٥(25)、 ٥٠(50)、 ١٠٠(100)でしょう。
ところで、アラビア文字は右から左へ書きます。 ところが数字だけは、一見左から右へ書いているように見えます。 例えば、123は、 ١٢٣と書きます。 しかし、アラビア語では123を百・二十・三と読むのではなく、三・二十・百と読みます。 ですから、やはり数字も右から左に書いているのです。

 ■ イスラム暦
イスラム暦(ヒジュラ暦)は、ムハンマドが聖遷(ヒジュラ)を行った西暦622年を紀元とする暦です。 純粋な太陰暦で、日本の旧暦のように閏月をおきませんので、太陽暦とは1年が11日くらい少ないです。 その分だけ、だんだんずれていきます。
例えば、イスラム暦1441年の最初の日は西暦2019年9月1日ですが、翌1442年の最初の日は2020年8月20日です。 イスラム暦の100年は西暦の97年に相当します。
西暦(AD)とイスラム暦(AH)の簡略変換式は、
  AH = (AD-622)×33÷32
  AD = AH×32÷33+622
です。 (あくまで概算です)
なお、イランとアフガニスタンで使われているイラン暦は、イスラム暦を太陽暦化したもので、西暦とは621年余りずれています。


 ● サウジアラビアのコイン 
下のコインは、1979年(イスラム暦1400年)発行の5ハララ硬貨です。

一見して花びらの絨毯のような、美麗な文字列です。 国旗にも使われているスルス体です。
サウジアラビアの国旗
لا إله إلا الله محمد رسول الله ‎
表上部واحد قرش貨幣名 qirsh
表中央部 خمسة هللات額面 five halala
表下部١٤٠٠発行年 1400
裏上部خالد بن عبدالعزيز آل سعود国王名 Khalid bin Abdulaziz Al Saud
裏下部ملك المملكة العربية السعودية  国王の敬称 King of Saudi Arabia

解説記事がなければ、とても読み取れるものではありません。


 ■ アラビア文字のフォント

日本語にも、楷書、草書、行書、明朝体、ゴシック体などなどの書体がありますが、アラビア文字にも多くの書体があります。
クーフィー(Kufic)体、ナス・タアリーク(Nastaliq)体、スルス(Thuluth)体などの特徴的な書体もありますが、残念ながら通常のWebブラウザでは使用出来ません。
現在Web内で普通に使用できる書体は、微細な変化を除くと、次の数種類のようです。 いずれも「サウジアラビア国王」の文字列です。
スルス体での「サウジアラビア国王」
上のコインの裏面下部の拡大画像
  ملك المملكة العربية السعودية  Arial書体,Times New Roman書体など
  ملك المملكة العربية السعودية  Tahoma書体など
  ملك المملكة العربية السعودية  Sans-serif書体など
  ملك المملكة العربية السعودية  Courier書体など
デフォルトの書体は、ブラウザによって異なるかも知れませんが、通常上のSans-serif書体のようです。
右の画像は、同じ文字列のThuluth体です。




 2019.3.27