古代インドのコイン

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  世界の4大文明の地で、文明の当事者がコインを発行したのは、黄河文明だけです。
  インダス文明の担い手は、現在でも解読されていない文字のついた印章を発明していますが、彼らの文明は他の民族によって消滅させられ、コインを発行することはなかったようです。
  インドは現在では「東洋」に属しますが、古代コインに関する限りヘレニズム文明を受け継いだ「西洋」に属します。


● マウリア王朝時代のコイン BC317-BC180ころ

サムプラーティ王の1パナ銀貨 紀元前3世紀

銀の板を一定の大きさに切り取り、角を削って重量調整し、5つのシンボルマークを打ち出したものです。
シンボルマークには動物、植物、自然、太陽、幾何模様などさまざまあります。
サムプラーティはマウリア王朝の第6代目の王(在位216-207BC)です。
3.2g 17×12mm
1パナ銀貨 紀元前4~2世紀

マガタ、マウリア王朝時代に発行された銀貨です。
だいぶ磨耗しています。
マウリア王朝では、このコインが広く流通し、官吏の給料や罰金などに使われたそうです。
3.1g 13×14mm

● バクトリア王朝のコイン BC250-BC20ころ

  バクトリアは、アレクサンドロス大王が残していったギリシャ人の国家です。 中国には「大夏」として紹介されました。

アポロドトス1世の銅貨 BC160-150

表:こぶ牛
裏:トリポッド
インダス文明の印章と非常に似かよったデザインです。
2.1g 13.3×14.0mm
メナンドロス王の銀貨 BC160-145

表:槍を構える王様の像。BAΣIEΛΩΣ ΣΩTHPOΣ MENANΔPOY(救世者メナンドロスの)
裏:左手に盾、右手に金剛杵を持つパラス・アテナ女神像。周りのカロシュティー文字は表と同じ意味。
この王のころが最盛期で、仏教の経典ではでミリンダ王として知られています。
この王の死後、バクトリアは衰え、月氏に追われて南下したスキタイ人に占領され、ギリシャ人の王たちは南に逃れました。
2.4g 16.1mm
  支配者の言語(ギリシャ文字)と、被支配者の言語(カロシュティー文字)が併記された、バイリンガルコインです。

● サカ王朝(スキタイ人)のコイン BC100-AD226ころ

  スキタイ人は、紀元前6~5世紀にはカスピ海の北にいた民族ですが、どんどん南下し、紀元前1世紀にはギリシャ人勢力を倒して、インダス川流域を支配しました。

アゼス1世のドラクマ劣位銀貨 BC57-35

表:長槍を持つ王の騎馬像
裏:ゼウス神像
1.4g 16.0mm
アゼス2世のテトラドラクマ劣位銀貨 BC35-AD10

表:鞭を持つ王の騎馬像 周りにBAΣIΛEΩΣ BAΣIΛEΩN MEΓAAOY AZOY(諸王の王、偉大なるアゼスの)。
裏:アテナ女神像(ゼウス?)。周りのカロシュティー文字の意味は表と同じ。
いかにも騎馬民族の王様というデザインです。
7.4g 24.3mm


● クシャーナ朝のコイン AD45-250ころ

  中国西北辺境にいた月氏民族が匈奴に追われ、紀元前2世紀バクトリアを追い出し、「大月氏王国」を建設しました。
  このうちの1部族がクシャーナ族で、紀元後1世紀ころ強大になりました。 中国には「貴霜」として紹介された国です。


無名王の銅貨 1世紀

表:小槍を持つ国王。放射状頭光。
裏:象使いの突棒をかかげる国王騎馬像。周囲に”諸王の王”を意味する「BACIΛEVC BACIΛEWN」。
ヴィマ・タクトゥ王ともともいわれる王ですが、謎の王です。
7.5g 23.0mm

カニシカ王の銅貨 AD130-158

表:左手に三叉の戟をもち、右手を拝火壇にかざす国王像。 PAO KANHPKI(カニシカ王の)。 中央アジア風の長いコートが特徴的です。
裏:ナナ女神。NANA(ナナ)。
カニシカ王の時代ローマとの交易が盛んで、絹などと交換に得たローマの金貨を自国の金貨に改鋳しました。
またこの王のころから、コインの裏面のカロシュティー文字がなくなりました。
4.3g 18.0mm
  諸王の王を意味する”バシレウス・バシレオン”が紀元前では「BAΣIΛEΩΣ BAΣIΛEΩN」とギリシャ文字書かれていましたが、紀元後のクシャン朝では「BACIΛEVC BACIΛEWN」とローマ文字に近くなっています。 ギリシャ文化を離れ、交易相手のローマ文化により接近したということでしょう。


● サータヴァーハナ朝(アーンドラ朝)時代のコイン BC180-AD230ころ

  南インドのデカン高原一帯は山岳と密林が繁った地で、北インドとは別世界でした。
  マウリア王朝の崩壊後しばらくして、この地帯を統一したのはアーンドラ族から出たサータヴァーハナ王朝です。

ビジャヤセーナ銀貨(西クシャトラパ) 3世紀

表:王様の像。 まさにインド人らしい風貌です。
裏:山、太陽、三日月。文字は「大総督ダマセーナ王の子、総督ヴィジャヤセーナの」
サータヴァーハナ朝の一族の地方王族と思われます。
1.7g 16mm


参考文献:
  「シルクロードのコイン」、古代オリエント博物館・岡山市立オリエント博物館、1979
     (「古代オリエント博物館開館一周年記念特別展」のパンフレット)  ・・ 非常に参考になります
  「ビジュアルワイド図説世界史」、東京書籍、1997  ・・ 地図はこの本を利用しました
  PLグプタ、「インド貨幣史」、刀水書房、2001
  山崎元一、「世界の歴史5-古代インドの文明と社会」、中央公論社、1997

  ブッダの時代

2002.9.23  2003.2.1 改訂