左のコインには、CONFOEDERATIO HELVETICA と書かれています。 しかし、一読するだけでは、どの国かわかりません。 実は、 HELVETICA(ヘルヴェティア)は、スイスの古名です。 カエサルの『ガリア戦記』にも登場するヘルウェティイ族に由来する国名です。 ヨーロッパコインの発行国を知るには、多少の予備知識が必要です。 コインに刻まれている国名のキーワードを一覧してみました。 |
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・アイボリー色の国は、現在ユーロを使用している国です。 コソボとモンテネグロは、ユーロを使用していますが、EUには加盟していません。 ユーロコインには国名がない場合があります。 ・国名は、コイン上で熟語として使われるとき、語尾が変化する場合があります。 例えば、 ITALIA(イタリア) - REPVBLICA ITALIANA(イタリア共和国) SVERIGE(スウェーデン) - SVERIGES KONUNG(スウェーデン国王) РОССИЯ(ロシア) - БАНК РОССИИ(ロシア銀行) などです。 上の表には、できるだけその両方を示しています。 |
●イギリス女王の称号 イギリスのコインには国名表示がありません。 イギリスの正式名称は、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、略称は Great Britain またはUKですが、コインにはそのよう文言は刻まれていません。 その代わり、国王の称号つきの名前が刻まれています。 例えば、 ELIZABETH・II・DEI・GRATIA・REGINA・FID・DEF のようにです。 女王名の後半は、by the Grace of God, Queen, Defender of the Faith(神の恩寵による、女王、信仰の擁護者) のラテン語表記です。 | |||||||||
●アイルランドのユーロコイン ユーロコインの裏側(額面の数字がある方)は、全ユーロで共通のデザインですが、表面のデザインは各国に任せられています。 国名を表示していない国も多いですが、アイルランドのコインには国名があります。 アイルランド語での国名は ÉIRE なのですが、éIRe のように見えます。 これはゲール文字という、アイルランド古来の書体です。 |
●スウェーデン国王のモットー | スウェーデンのコインには、表面に国王像と国王名(CARL XVI GUSTAF SVERIGE)が刻まれていますが、裏面の国王のモットーが特徴的です。 現国王カール16世グスタフのモットーは、FÖR SVERIGE I TIDEN です。 "For Sweden - With the Times" (スウェーデンのために、時代とともに)の意味です。
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●ノルウェーの国名 | ノルウェーコインの国名には、NORGEとNOREGの2種類あります。 よく似ていますが、書き間違いではありません。 ノルウェー語には、ブークモール語とニーノシュク語の2つがあります。 ノルウェーがデンマークに支配されていた時代に、デンマーク語に近い言語として発達したのがブークモール語、その後ノルウェー古来の言葉をもとに作られたのがニーノシュク語。 前者は主に東ノルウェーで使われ、後者は主に西ノルウェーで使われています。 どちらも公用語です。 ブークモール語の表記が NORGE、ニーノシュク語の表記が NOREG です、 両方の書き方が共存しています。
●西ドイツと東ドイツ | 1990年、東ドイツは西ドイツに併合されました。 併合前の東ドイツの銘は、 「ドイツ民主共和国」(DEUTSCHE DEMOKRATISCHE REPUBLIK)です。 これに対して、西ドイツおよび統一後のドイツの銘は 「ドイツ連邦共和国」(BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND)です。 右のコインは、1969年発行の西ドイツ硬貨。
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●旧ユーゴと新ユーゴ | チトーが建国したユーゴスラビアは、1991年に解体し、いくつかの国に分裂しました。 そのような中に同じユーゴスラビアを名乗る国がありました。 旧ユーゴスラビアの銘は、 「ユーゴスラビア社会主義連邦共和国」(СФР JУГОСЛАВИJА - SFR JUGOSLAVIJA)、 新ユーゴスラビアの銘は、 「ユーゴスラビア連邦共和国」(СР JУГОСЛАВИJА - SR JUGOSLAVIJA)です。 右のコインは、1989年発行の旧ユーゴ硬貨。 新ユーゴスラビアも、2006年にセルビアとモンテネグロに分離しました。
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